出版社がキラリ見せる矜持。無代誌はピンチにあっても出し続けてほしい。

新刊や話題の作家、本。読む人はその情報をどこで仕入れるか。ぼくは書店の店頭に置いてある無代誌をよく利用します。「無代誌」とは出版社の出すPR誌で、基本タダ。それでいて、どこもわりと読み甲斐のある内容で構成しているんですよね。

新潮社「波」、講談社「本」、筑摩書房「ちくま」、岩波書店「図書」あたりが、わりと知られているでしょうか。レジ脇や、入り口付近に置いている書店が多い印象。中にはフリーペーパー群と一緒に、無代誌専用のラックを設けているところもありますね。

無代誌は新刊出版記念の著者インタビューやブックレビュー、連載コラムやエッセイなどで内容が占められてます。幻冬舎の「ポンツーン」や小学館の「きらら」などは、連載小説の宝庫。ベテランから新人作家まで、ここから単行本化を目指すんだろうなというものがズラリです。

岩波書店の「図書」は2016年で創刊80年、長寿のPR誌です。2015年10月の通算800号記念号では、今もたびたび思い出す記述があります。「図書」の連載の担い手である池澤夏樹さんが斎藤美奈子さんとの対談の中で、年間購読料1000円(書店に行かなくても入手・購読できますが、その場合は有料)に引っ掛けて「家賃100円の書斎」とうまいことを言ってました。池澤さんはその対談中「ブログなんかやらない。お金ももらわないのに書くのは嫌だな」みたいなことも語っています。

自分がブログを書くようになった今、なんとなく複雑な気持ちで思い出します。池澤さんはプロの作家で名を成されているから、ブロガーの心理が理解できなくて当然かなぁ。実はぼくも、つい最近まで同じことを思ってました。口にこそ出さないけど、「素人がそんなに伝えたいこと、あるものかね」と、冷ややかに眺めていたものです。

スタイルズケイクス

ぼくがブログを始めたのは、自分が書きたいというよりは「必要に迫られて」の部分のほうが多分にあるのだけど(なぜそうなのかは別の機会に)、始めたら始めたで、なかなか楽しいものですね。ある人から「ブログを持っていないのは、この世に存在してないも同然」と言われたのも衝撃的で、まぁどこまで続くやら。とにかく、えっちらおっちらやっていきます。

とまぁ、こんな思索にふけるきっかけもくれる無代誌。隠れた名文がわんさとあります。平凡社の「月刊百科」とか、マガジンハウスの「ウフ.」とか、コストカットのあおりで休刊してしまうところもあります。が、こういうものを発信してこそ、文化の一翼を担う版元のスラックであり、アイデンティティであり、矜持なのではないでしょうか。