「ゼロイチ」再読。組織の中でも無から有は生み出せる。

感情認識ロボット「Pepper」の開発リーダーだった林要さんが、「組織において新しいことを成すには?」に切り込んだ本です。

「ゼロイチ トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法」(林要著/ダイヤモンド社/税抜1,500円)

 

ゼロイチ

 

トヨタではレクサスLFAというスーパーカーとF1の開発、ソフトバンクでは孫正義さんにリーダーシップを叩き込まれた話。屈辱とリベンジ、挫折と成長。林さんの現場体験談は生々しいエピソードに満ちていて、そこから導き出される言葉は示唆に富んでいます。

孫さんからの呼びかけに躊躇なく手を上げることで、ロボットのプロジェクトにかかわる機会を手にしたこと(「謙虚」に逃げず、図々しく)。転職したてのソフトバンクで思うようにプロジェクトを動かせずにいたが、調整や気遣いを捨ててゴールさせた話(人を動かすのは「情熱」以外にない)。レクサスLFAの開発に性能や技術の向上だけでなく、「ストーリー」を加えることで顧客の憧れを見える化する(「願望」が主で「技術」が従)など。

林さんは技術者として自分は劣等生と謙遜しますが、本人の努力だけでなく、熱量と環境が大きかったんだろうなと想像できます。ただ、これまでさほど大きくない組織に身を置いてきたぼくにとっては、必ずしも当てはまらない例もありました。

「少々馬鹿でも失敗できる人」が結果を出すというけれど、チャレンジした事業に失敗して吊るし上げを食らって去っていった人を知っているし。会社では「常に新しいものは古いものより劣勢に立たされる」というけれど、評価軸がその真逆の組織も知っています。

環境のせいにしたくはないが、環境はやはり大事ですね。周囲が無能で無理解なら、どうしようもないことだってあります。その場合はさっさと環境を変えるほかない。変えるには一朝一夕にいかないこともあるでしょうけど、継続こそキモですよ。大企業にいながら名を残す仕事ができた林さんを羨望するのは簡単ですが、その背景には自らの努力と情熱があったことは間違いない。環境(組織そのものと、組織の中における上司・同僚・チームメンバー)を引き寄せたのは、林さん自身にほかなりません。

著者の林さんとは昨年、あるセミナーの隣席だったことで面識を得ることができました。林さん、穏やかながら何か雰囲気が違うなと思ったら、やっぱりすごい人でした。自分とはかけ離れた世界の方ゆえ、そこでご一緒しなければ、おそらくこの本を手に取ることはなかったでしょう。今、自身が設立した新会社で次なるロボットの開発に挑んでいるようです。どんなものでアッと言わせて、日常をシフトさせてくれるのか。楽しみでなりません。

それにしても。林さんだけでなく、昨年あたりから「すごい人」と知り合うことができて、うれしい変化です。一次のつながりだけでは、まずこうはいかない。そして、人って面白い。知り合えた方の一人ひとり、時間の許すかぎり、その人の「過去の足跡と未来への地歩」の話を聞きたいな。