今朝放送の『あさイチ』(NHK総合テレビ)に久米宏さんがゲスト出演していました。久米さんを知っている人は、ぼくとほぼ同世代か年上ですね。元TBSのアナウンサーで、フリーとしても多数の番組をヒットに導いた方です。久米さんはぼくにとっては『ザ・ベストテン』『ぴったしカン★カン』(以上TBS)、資生堂提供のトーク番組『おしゃれ』(日本テレビ)がパッと出てきます。
フリーになってからの久米さんを代表する番組といえば、やはり『ニュースステーション』(テレビ朝日)ではないでしょうか。カタブツのニュース番組にショーの要素をもたらしたともいえます。このヒットで、似たような番組が随分と追随してきたものでした。『あさイチ』で、当時の番宣用スチール写真を見せていたのですが、久米さんも小宮悦子さんも若い! 何よりも写真から鋭利な才気、熱情が伝わってくるものがありました。
久米さんは最近はラジオ番組の仕事がメインで、あまりテレビには顔を出しませんが、それでも画面を支配する独特のオーラは昔のまま。博多華丸・大吉さん&近江友里恵アナウンサーとのやり取りは、テレビの歴史の裏話的な要素ばかりでしたが、ただの内輪ネタや懐かしみで終わらせない面白さがありました。にしても、『ザ・ベストテン』の黒柳徹子さん、「Nステ」の小宮悦子さんと、久米さんとコンビを組む人も相当のバイタリティの持ち主。でなければ、とても久米さんとのコンビは務まらないでしょうね。
後輩に当たる近江アナの「良いアナウンサーとは?」との問いに、久米さんの言うことがふるっていました。答えは「言いたいことが伝わる人」。「たまに何を言いたいか分からない人がいる、つまり結論は何なんだ?と」。言いたいことがない人が伝え手になってはいけない、ニュースを機械的に読むだけではいけない。そういうことを久米さんは後輩アナウンサーたちに託したいのかもしれません。
久米さんは33人の死者を出した「京都アニメーション」の第1スタジオ放火事件を例に補足し、「亡くなった33人のご家族がどう思うか、みんなアニメが好きだったんだろうなぁ。仕事が始まる10時すぎに火をつけたということは計画的なんじゃないのか。ほんとうに悲しいと思って原稿を読むか、字面を追って読むだけか。友達が中にいる人のことを思って読んだら、ニュースはだいぶ違う」。
歯に衣着せぬ、歯切れのいいトークもやっぱり昔のままで、後半の後半にNHK批判も。それでいてスタッフを困らせないようすべてを言わず、あえて「これ以上は言いません」と自制して盛り上げる。トークの合間に「あと何分(尺があるの)?」と確認する。もう根っからのテレビ人だし、テレビというメディアに愛情があるって、見た人は分かるはず。久米さんでテレビの楽しさを味わってきた人間の一人としては、そういうところが伝わってきたのがうれしかったな。