初版2004年の本ですが、ずっと本棚の目につくところに置いていました。当時ぼくは32歳か。初読のとき、ここに書かれている人は「進んだ考え方だなぁ」とまるで他人事でしたけど、今はかなり迫っています。自分が近づいているわけではありません。むしろ漫然と生きてきたことに気づかされ、今さらながら戦慄してる有様、という意味で胸に迫ります。今でこそ珍しくない起業や独立。進んだ考え方と行動力を発揮する著名人への取材を通し、「あなたはどう生きるのか」をズバリ問う本でした。
「組織に頼らず生きる 人生を切り拓く7つのキーワード」(小杉俊哉、神山典士著/平凡社新書/税抜760円)
ノンフィクション作家の神山さんによる人物ルポに、慶大院助教授の小杉さんが各人の生き方にキーワードをプラスする構成です。小杉さんの一人称視点での解説を読むと、なるほど、人生戦略や哲学の大事さを深堀りすることができます。
ここでは当時(人選に時代を感じる!)何かと脚光を浴びていた、5人+2組が登場します。
自らを「触媒(自身は変化しないが、他の物質の化学変化のスピードを変える力のある物質)」と客観視するマネックス証券代表の松本大さんは「自己理解」というキーワードで。セリエA移籍を実現しつつ、税理士資格取得を目指した中田英寿さんは「リスクテイクとリスクヘッジ」。自らの才能を信じ、貫いた佐渡裕さんは「ギフト=天啓」といったように。
あの清原和博さんが出てくるのは当時ならではですね。マスコミに叩かれまくり、人間不信ぎみに取材に応じる様子が書かれてます。そのキーワードが「認知」として語られていたのが興味深い。ファンからの無視=ディスカウント、末期がんの青年からの励まし=ストローク、という括りです。
小杉さんはこの項で、悪口や口出しに対しカッとなったり反発したりするのは、自分自身の行動を相手のせいにすることであり、主体性の放棄と断じます。痛烈ですね。
「ディスカウントされてもプラスのストロークを打ち返せるようになりましょう」ということを勝間和代さんが仰っていて、この本でそのすごさを再確認した格好です。
それにしても、この本。だいたいタイトルからして、グサッときます。おまえはどうなの?成長したの?と突きつけられるかのようです。映画の中のヒーローやスターに憧れるように、この本の登場人物みたいに生きたいと思う人は多いはず。自分には無理だと決めつけるのは簡単ですが、諦めるのは簡単。粘り強く、「みどころのある人物」目指し、意識と行動していきます。
神山さんは週刊誌を中心に活躍する作家でありながら、朝カルでエッセイ教室なども開いています。次回こんなスクールがありますよ(習ったことがありますから、勧誘のハガキが来ました。アナログだなー)。ノウハウをこれでもかとシェアし、行動を促すのが神山さんなのです。
※肩書きはすべて当時