東京・上野の東京都美術館で開催されている『コートールド美術館展 魅惑の印象派』(~2019年12月15日 ※2020年に愛知、神戸へ巡回)。英ロンドンのコートールド美術館の改修工事による休館に伴い実現した今回の展覧会は、同館のコレクションから印象派、ポスト印象派の作品が来日しています。今回、夜間に入場人数を制限するプレミアムナイトチケットを購入して、観てきました(18時~20時30分、各回400人、4,500円)。
プレミアムナイトの実施は2019年10月5日・29日と、ぼくが訪ねた11月9日の3回。鑑賞券と公式図録が付き、音声ガイドが貸与されるチケットです。
多少の混雑は仕方ないけど、まぁゆっくり見られるだろうと楽しみにしていたのですが……。これね、落ち着いて静かに作品を見たい、作品に向き合いたいという人にはお勧めできません。なぜか。
「写真撮影している人たちのエチケットがなってない」からです。
このプレミアムナイトのもうひとつのセールスポイントは、通常は禁止されている展示作品の写真撮影がOKになったことです(19時~20時30分)。
がしかし、そこそこ鑑賞客が集まっている話題の美術展で写真撮影可にすると何か起きるかというと、作品の前でスマホの画面やカメラのファインダーを覗いたまま、動かない客が多くなるのです。
この手の人たちの振る舞いを見ていると、絵を見に来たのではなく、写真を撮りに来たのかと思うほど。撮影に夢中で周りが見えなくなるから、作品の前から退こうとしない、見ている人の前に平気で割り込んでくる、周りの人にぶつかる。
何が気に食わないのか、やたら何枚も撮る。構図を変えて撮る。額縁や作品の一部分を接写しようと、触れるのではないかというくらい作品にカメラを近づける。少し落ち着いたらどうですか。作品と向き合いなさい。
老いも若きも、男も女も、カメラに夢中のキミたち、何しに美術館に来たの?
そもそも図録が付いてくるのに、熱心に作品を撮影している不思議。あ、行った記念に、後生大事にデータで保存しとくのか。
いえね、のべつダメとまで声高に言うつもりはありません。かくいうぼく自身、美術館で撮影することはあります。けれどもそれは比較的観客が少なく、撮影可能な作品にかぎりサッと1枚撮っておしまい。周りに目を配れないなら、他の鑑賞者の妨げになる自覚がないなら、撮影などしないほうが賢明です。ま、この手の人たちは「美術館がOKしてるのだから、目くじら立てるな」と権利を主張するだけだろうけどね。
展覧会自体は心惹かれる作品もあっただけに、ほんとうに残念。ですが、鑑賞する側のエチケットとしてひじょうに勉強になり、また自戒する機会にもなりました。
夜の美術館、ナイスアイデアの良い企画と思います。が、同様の企画が今後あったとしても、写真撮影不可とならないかぎり、もう訪ねることはないでしょう。