ショーペンハウアー(アルテゥル・ショウペンハウエル/1788-1860)『余録と補遺』の一部を収めた『自殺について』(岩波文庫版)読了。
ワシはね、このお爺さん、信用に値する哲学者だとつくづく思うのよ。
本書でも「人生は労苦して果さるべき課役である」と言って憚らないこの人、好きだわ〜。
本書は表題作『自殺について』をはじめ、ショーペンハウアーによる自殺にかかわる論考をリコメンドした5編を収めたもので、全編にわたり自殺あるいは人生についての激辛な自説が展開されています。
なぜ手にしたのか? 読後感は?
武田砂鉄さんのPodcast『KODANSHA presents 金曜開店 砂鉄堂書店』で紹介されていた梅田孝太さんの著書(未読)や、書評YouTuberアバタローさんのチャンネルなどでショーペンハウアーのことを知り、興味を持ったのがきっかけです。
最近まで哲学は遠い存在でしたが、ショーペンハウアーさんが入口になってくれた気がします。
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ところが、本書の訳者である斎藤信治さんのあとがきによると、「ショウペンハウエルなどを云々するのは哲学の素人のやることだといった風な暗黙の評価が成立してきていたかのように思われる」と日本の学界では軽視されていたようで。
その原因を斎藤さんはあまりにも面白く、わかりやすいからだと分析しています。
哲学書ビギナーのワシにとっては、それでも本書は難しく感じられました。付いていけたのは、ショーペンハウアーさんの論に深く頷けるものがあったからでしょう。
表題作はともすれば自殺の擁護とも読めるけど、それほど短絡的ではありません。
自発的に生命を放棄するなどとは、「すべて甚だ善し」と宣うたあの方に対して余りにも失礼な、ということではあるまいか。
と一神教(「あの方」とは『創世記』のエホバのこと)を断じ、当時自殺を犯罪としていた社会を激烈に批判しています。
世界各地の宗教的背景に切り込みながら、自殺せざるを得なかった人に深い憐憫と同情を寄せる人間性に感じ入るとともに、「生は夢で死はまた目覚め」という論を展開するショーペンハウアーさんの一貫性に、痛快ささえ覚えます。
まとめ
自己肯定感だの人生を楽しめだのという概念が罷り通る今の時代、ショーペンハウアーなんぞにはドン引きする人もいるでしょうね。
でも甘い言葉で慰撫するようなことも、きれいごとも言わないこの人には共感しかありません。
人生は苦しみ、その通りですよ。その苦しみといかに付き合い、少しでも和らげて生きていくか。ショーペンハウアーの本が処方箋になってくれる気がします。
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