上野公園の台湾フェスが混雑していたので、トーハク(東京国立博物館)に一時避難。
常設展を見て回った後半に、新紙幣発行記念と冠された『お札を創る工芸官の伝統技~すき入れと凹版印刷の芸術の世界~』(2024年6月11日~同年7月15日/平成館1階ガイダンスルーム)を見つけて、ちょっと覗いてきました。
新紙幣発行開始を7月3日に控えた今、まさに新札・お札を知る絶好の機会。展示室のモニターに映された、お札の原版を作る工程の「手作業」に度肝を抜かれました。
展示は日本銀行券の製品設計を担う国立印刷局工芸官の技術を伝えるもの。国立印刷局所蔵の工芸作品をトーハクで展示するのは初とか。
こじんまりした展示ですが、内容充実。
室内の写真撮影すべてNGとは、万一にもニセ札づくりのヒントになるかもしれないことを警戒したうえか。
でも、それ以上に、精緻極まる工芸技術はなるだけ門外に出したくないのかも。
日銀券や官報、パスポートの製造を行うのが国立印刷局で、これら製品は「工芸官」と呼ばれる専門職員により生み出されているそう。
凹版彫刻画やすき入れ美術紙(下部の案内ボード画像参照)各18点が展示され、その細緻かつ美しさにため息が出ます。
それらもさることながら、最も驚かされたのが日銀券に写された肖像画の線画。
完全手彫りで、工芸官はビュランという金属の細密彫刻専用の彫刻刀を用い、顕微鏡のようなルーペを使って原版に線を彫っていきます。
この様子を収めた映像もぜひ見てほしい。
呼吸をするのも憚れるような緊張をもって、彫り進める様子が映されます。
途方もない根気と技術を要するこの技術は、数々の伝統工芸に勝るとも劣らない。
もっと広まってもいいんじゃないかな。