先週末は1泊2日で名古屋に行っていました。約2年ぶりかな。名古屋や仙台ですと、東京からさほど遠くなく、旅行という感じでもないですね。それに大阪や福岡、札幌もそうですが、どこも大都会なので、旅気分全開という感じではないのも確かです。
目的は3つ。観劇、宿、飲み。これです。まずは観劇から。ミュージカル『マリー・アントワネット』、12月16日(日)マチネの回を御園座で観ました。『MA』観劇は帝劇公演に続き2回目。マリー・アントワネット役は花總まりさんです。
僕は基本的に、気に入った演劇なら2回は観たいほう。ミュージカルは特に。1回目で全体像を把握した後、2回目でシナリオや細かい部分をつかみます。
この演目はやはりシルヴェスター・リーヴァイさんの手がけるドラマティックで叙情的な旋律がステージを強烈に彩り、物語を引っ張ります。
今回、御園座で僕が観た回のキャストは、王妃マリー(花總まり)と激しく敵対するもう一人の市民マリー役を昆夏美さんが、王妃マリーの愛人フェルセン公爵を古川雄大さんが演じる組み合わせ。
帝劇で観たときと、この二人がダブルキャストで異なる配役でした。結論を言えば、どちらも素晴らしかった。
帝劇で観た市民マリー役のソニンさんは、米国仕込みの歌姫のよう。ほんとうに成長したと感じますが、押し出しが強く、アンサンブルの魅力もある演劇やミュージカルより、ソロのほうが向いているのではないかと思います。
一方の昆夏美さんマリーは、周りの役者との調和が取れていて、声量も調整している。花總さんとの獄中の二重奏場面は、ちゃんとハモリが聴けました。ソニンさんと昆夏美さんどちらも良いのですが、昆さんのほうがより演劇的調和が取れているといえます。
フェルセンを演じた古川雄大さんも見逃せません。いっそう歌が上手くなっていて驚きでした。誰だ、「古川サンのルックスで、田代万里生サンの歌唱力があればいいのに」なんて言ったのは。
『エリザベート』のルドルフ役、『モーツァルト!』のタイトルロールと難しい役を経て、今や一枚看板で演目を背負える人。完全に王子様キャラをモノにし、しばらくはご婦人方をキャーキャー言わせることでしょう。女性が夢を見られるだけの容姿に、歌唱が伴えばもうカンペキな説得力です。
さて物語。貴族のマリー・アントワネットと市民のマルグリット・アルノーという二人のマリー。市民マルグリットは貴族のマリーを憎み、ジャコバン党に肩入れして彼女を徹底的に貶めるが、最後は己の正義にしたがい、彼女に手を差し伸べる。
なぜこの物語に魅かれるのかといえば、公平性と共感性の話だからなのでしょうね。市民マリーが私生児という背景設定を除いたとしても、単純に情だけで動いたわけではないことが分かります。
敵でありながら危機を救ってくれたフェルセンに対し、「借りは返す」と王妃マリーとの逢瀬をセッティングしてあげたり。
吉原光夫さん演じる貴族オルレアン公が味方してくれると知り、その暗躍に協力し、実はそれが陰謀と知ると最後の最後で一矢報いる。
自由・平等・博愛と謳いながら、恐怖政治へと突き進むジャコバン派に異を唱え、自分の筋を通す。
花總マリー王妃目当てでしたが、なんと物語を追うにつれ、市民マリーに肩入れしてしまってました。
ほんとうによく出来た史実フィクションです。原作者の遠藤周作さんは自作のミュージカル化を、あの世でひっくり返りながら見守ってるかもしれません。
ところで伏見・御園座には初めて足を運びました。リニューアルオープンしたばかりで、たいへんにきれいです。劇場は意外にコンパクトな印象。座席が千鳥配置でないのは残念ですが、面積の限りゆえ仕方ないのかも。
松竹の公演や、落語、コンサートにも使っているそう。半蔵門の国立劇場や、福岡の博多座にも通じる和の雰囲気があります。
エスカレーターはじめ内装が真紅で、このお大尽感は良いですね。