石川県金沢市で開かれている西出光一郎さんの写真展「NORDIC LIGHT」(2020年7月18日〜7月22日、金沢市カフェ&ギャラリー ミュゼ)に足を運んできました。
金沢在住のクリエイターである西出さんが、2019年7月に北欧(フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)を旅した際に撮影した写真20点が展示されています。
特筆すべきは、これらの写真はデジタル一眼レフではなく、「ハッセルブラッド」という極めて特殊な構造のフィルムカメラで撮影されていること。
フィルムどころか、デジカメやスマホのカメラに慣れてしまった身としては、聞くだけでめまいがしそうな扱いの難しさ。
おまけにダンベルを上げるように重い(1.5Kgもあるそう)。
西出さんの記事によれば、フィルム1本のお値段が1,100円前後と、ハード面もソフト面もとにかくハードルが高い。
相当な趣味人でないと匙を投げたくなるのは明らかです。
がしかし、この貴重な機材を操って西出さんが切り取った北欧の風景は、特有の自然な手触りがあるものでした。
人も風景も、うっすらと乳白色を帯びていて、心もとない一筋の光ではなく、被写体全体に降り注ぐように光が射している。
そのせいか、どの写真も
穏やかで温かい
のです。
北欧に対して全然無知な身としては、機能的・ミニマル・無機質・無表情といったどこか怜悧なイメージが先行しているのですが、写真は全く真逆のもの。
そこで気づきました。
温かみこそが北欧の本質なのだと。
温かみを写真として形成しているのが「NORDIC LIGHT」であり、ハッセルブラッドの賜物であり、撮影者の思念であり。
気候やロケーション、カメラそのものとそれを扱えるスキル、撮影の技量、どれ一つ欠けても成り立たないことでしょう。
(実際は意図しているのでしょうけど)、すべてにおいて作為の感じない、自然な温かみと光に満ちた写真の数々でした。
西出さんによると、ハッセルブラッドがキーワードとなって、この展覧会を知って遠方から足を運ぶ人もいるとか。
名機がつなぐ奇縁も、すてきな話じゃないですか。