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『斜陽館』:太宰治の生家のスケールに、作家の心情を想像する

太宰治 斜陽館

今回の青森旅行の柱は『太宰治記念館 斜陽館』。弘前で1泊後、金木町にある屋敷を訪ねました。
どうしても来てみたかったんですよね。太宰の生家をこの目で見てみたくて、ついにようやくです。

今風の「豪邸」よりも、お屋敷と呼ぶのがふさわしい。太宰は短編『苦悩の年鑑』のなかで、父親が建てたこの屋敷のことを

この父は、ひどく大きい家を建てた。風情も何も無い、ただ大きいのである。間数が三十ちかくもあるであろう。それも十畳二十畳という部屋が多い。おそろしく頑丈なつくりの家ではあるが、しかし、何の趣きも無い。

と書いていますが、身内ゆえの辛辣さもあるだろうし、何より父親に対しては複雑な感情を持っているからでしょう。
実際に伺った屋敷には、むしろ趣きしか感じませんでしたねワシは。

『斜陽館』とは

大地主であり貴族院議員も務めた太宰の父親、津島源右衛門が建てた入母屋造り(いりもやづくり)の屋敷で、1907年(明治40)竣工。1階11室(278坪)、2階は8室(116坪)と付属建物、庭園から成り、総面積は約680坪に及びます。
戦後になって津島家が手放し、1950年(昭和25)から旅館として営業。1996年(平成8)に旧金木町が買い取り、1997年(平成9)の復元・修復工事を経て、1998年(平成10)から記念館として現在に至っています。
2004年に国の重要文化財に指定されている観光名所です。
邸内の奥には太宰の小説の文章が貼られ、映像資料も。文庫蔵は資料室になっており(撮影禁止)、太宰が生前着用していたマントや執筆用具・直筆原稿・書簡や家財道具など、ここでしか見られない史料が展示されています。

感想:昔のお屋敷のスケールは比類なし

太宰が郷里のことを綴った『津軽』は初読でして、その中に生家である斜陽館のことや津軽地方のことが書かれています。今回ちゃんと読んでから斜陽館に臨みました。
太宰は上記引用のように、家自体への思い入れを表に出していませんが、そのスケールの大きさに圧倒されつつ、邸内を埋めつくすヒバ部材の香りに胸いっぱいになりましたね。
土間だけで車が数台入れるほどの広さ、天日が差し込む吹き抜けになった板間、2階には貴賓室のような洋間もあります。米蔵が外ではなく邸内にある家って、なんだろうね。
1階も2階も回廊になっているのは、やはり昔の家です。回廊は昭和時代の日本の住宅には普通にあったんだけどな。

斜陽館 2階の廊下

斜陽館の階段

斜陽館の蔵

斜陽館の板間

そんなスケールの違いにため息をつきつつ。でも何よりも、太宰の息吹を想像できたことがうれしかった。
こんなところに生まれてきた太宰は、経済的に恵まれた環境は確かだっただろうけど、ぼんぼんゆえの苦悩は想像に難くありません。
坊ちゃんだからこそ、人一倍勉強して優秀な成績を修めなければならなかったし、名を上げねばならなかった。
その葛藤と切なさに束の間、思いを馳せました。

太宰治記念館『斜陽館』概要

  • 所在地:青森県五所川原市金木町朝日山412-1
  • 開館時間:9時〜17時(最終入館は16時30分)
  • 休館日:12月29日
  • 入館料:一般600円、高校・大学生400円、小中学生250円
    ※20名以上の団体割引、津軽三味線開館入館料との共通券あり

#2024年の青森県の旅(9)

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