東京の自由劇場で5月14日まで公演中のストレートプレイ『ブラックコメディ』を観に行ってきました。物語も演出も期待以上で満足。ぼくは普段ほとんど劇団四季を観ませんが、今回はヒロインを演じる女優目当てにチケットを取りました。
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その女優とは三平果歩さん。直近の『コーラスライン』では整形美女ヴァル、『CATS』ではランペルティーザを演じています。なんといってもいちばん有名なのは『リトルマーメイド』のアリエルでしょうね。
彼女を知ったのは2015~2016年に上演された『コーラスライン』。無名のダンサーがブロードウェイの舞台オーディションを受ける物語です。群像劇だから、ひとりひとりに人生のストーリーがあり、キャストひとりひとりに見せ場がある。ぼくが大好きな作品で、劇団四季でも海外のカンパニーの来日でも、公演があるたび複数回観に行っています。
ヴァルはその中で「実力抜群なのにブロードウェイのオーディションを落とされまくり、その理由が自分がブスだからと気づいて整形し、リベンジ続行中のダンサー」という、ぶっ飛んだ設定。「dance:ten,looks:three」という持ち歌もある。なのに、さほど重要ではない脇のキャラクターという認識でしかありませんでした。が、三平さんの演じるヴァルは違った。「あれ?ヴァルってこんなにおいしい役だったっけか」と思わしめてしまう。
それは三平さんが「舞台あらし」というか、場をさらってしまう女優、ということなのかもしれない(他の俳優が目立たないという意味では断じてない。『コーラスライン』とはそういう演目)。際立って「華がある」ということなのでしょうね。
歌よしダンスよし、おまけにかわいい。ん?この3拍子揃った女優の既視感は…。なんてことはない、応援している礼真琴さん(宝塚歌劇団星組)のことでした。あ、俳優なら最後は「演技よし」が正しい3拍子、なのでしょうけど。演技の引き出しは2人ともそう多くない気がします。
それは演技が下手というのではなく、求められる芝居が劇団四季や宝塚歌劇の枠内に収まっているから。もし三平さんや礼さんが、劇団という今のフィールドを飛び出すことがあれば。舞台上で、あるいはそれ以外で、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。わかるはずもない未来を夢想してしまいました。