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映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、スリリングで誠実な物語に打たれる。

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

マスコミを礼賛するだけ、過去のスクープの裏話発掘ものは正直「ちょっともういいや」的な感じがあったのですが。観て良かったです。さすがのスピルバーグ、恐れ入りました。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(The Post)という邦題は1967年米国防長官マクナマラの指示で作成され、米国のベトナム政策の実態が記した極秘文書のこと。原題がこの文書の内容を白日の下にさらした主要紙ワシントン・ポストを指しているのでしょう。

「インディ・ジョーンズ」シリーズしかり、「E.T.」しかり。スピルバーグといえば冒険娯楽モノ。正直あまり行ってほしくない賞狙いの社会派映画でも魅せてくれるから、まぁ文句は言えないけど。今作はその社会派路線ながら、スピード感、サスペンス感も見事で一級の娯楽作でもあった。

記者たちが八方手を尽くしてなんとか入手した機密文書を報道するか否かで、名ばかり社主キャサリン(メリル・ストリープ)は苦悩。彼女に引き抜かれてワシントン・ポストに来た編集主幹ベン(トム・ハンクス)は部下たちを叱咤激励しつつ、いざ出すか出さないかの瀬戸際でコトの重大さに気づく。

出せば法廷行きは避けられず、それどころか共謀罪(先に報じたニューヨーク・タイムズが記事差し止め命令を食らっており、情報源が同じなら罪に問われてしまう)で刑務所入り。社員、株主などのステークホルダー、そして読者と世論。キャサリンが下した勇敢な決断に、何かにつけ尻込みしている僕は励まされた、なんてもんじゃなかった。

夫の死後、専業主婦から米国主要紙初の女性発行人となったキャサリンは、意思決定の場で思うように発言すらできず、男性で占める周りの役員たちのプレッシャーに苦しめられる。表立って誰も彼女を責めないけど、かといって彼女は「NO」とも言えない。事前にメモを見ながらスピーチの準備をする場面なんて、ぼく自身を見ているみたいで涙ぐましかった。そのとまどいと緊張の演技がまた上手いんだ、メリル・ストリープという人は。

そんなことを繰り返した揚げ句、このような重大事を前にしたら。僕なら間違いなくブレます。あっさり降参、白旗です。だから、もし中途半端に彼女が持ち上げられていた社歴、人生を送っていたら、むしろ決断ができなかったのではとさえ思う。勇敢な決断は、積もりに積もった思いの爆発でそうなった、ともとれる気がする。

トム・ハンクスはじめ記者たちの描き方も見事。大手紙でバイト小僧をしていた身だから、ああいう豪気な記者って普通にいたよなぁと思い出しました。原稿を送るエアシューター、活版の印字、新聞が大量に刷り上がっていく様子など、もうそれを見るだけで胸がいっぱいになってしまう。

編集局を流れるようなカメラワークで見せる撮影監督ヤヌス・カミンスキー、おなじみジョン・ウィリアムズのスコアなどスピルバーグを支える職人たちの仕事もばっちり。正しいことを誠実にする。物語にも作り手からも、そんな思いが伝わってきて胸に迫った。

映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

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hiroki「酒と共感の日々」

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