第94回アカデミー賞授賞式で、ウィル・スミスさんがプレゼンターを務めたクリス・ロックさんを平手打ちにした件。
ぼく個人は、「あの暴力はひじょうに良くない」という意見です。
どんなに侮辱的なことを言われたとしても。
その瞬間を後からYouTubeで見たのですが、衝撃的でした。
昨日からこの「事件」がずーっと心に引っかかっているので、ここに書かせてください(以下敬称略)。
ことの発端は、クリス・ロックがウィル・スミスの妻であるジェイダ・ピンケット・スミスの丸刈りをいじったスピーチ。
妻ジェイダが脱毛症のためやむなく短髪にしていることを公の場で笑いにされ、ウィルが壇上に出てきてクリスに一発お見舞いしたというわけです。
たしかにクリス・ロックのジョークは、ポリコレが持て囃される今では、明らかにやりすぎです。
「“G.I.ジェーン2″を楽しみにしてるよ」という悪ノリは台本にはないアドリブだったそうで、これでは事前チェックのしようがありません。
アカデミー賞授賞式は米3大ネットワークのひとつABCで放送されるエンタメ界の一大イベントで話題性も大きい。
内々の、クローズドのパーティとはワケが違うのです。
クリスがそんな当たり前の事実を踏まえていれば、ジェイダの髪について少しでもリサーチしておけば。
ですがしかし。
クリス・ロックの軽はずみなアドリブの現実をもってしても、ウィル・スミスを言動はダメです。
衆人環視での見える暴力は、目の当たりにした人すべてを緊張状態にし、程度はともあれ不穏にさせるから。
そして、当事者はもとより、後々まで目撃者の記憶に残ってしまうからです。
感情的になってしまう気持ちは理解できるのだけど、なんとかこらえてほしかった。
授賞式後に抗議することもできるだろう。
ライブ中継で手を上げることで、言葉の暴力にNOを突きつけたウィルが素晴らしいという意見が日本のネット界隈では目立つけど。
言葉の暴力に対して肉体的な暴力で応じるのが正義ですか。
ぼくは違うと思う。
この手の暴力を目の当たりにしたことのある人なら、そのことを反芻した人もいるんじゃないかな……って、ぼくがそうなんだけど。
結局そこで堪えるか、堪えられるか、こらえるか、こらえられるか、です。
ウィルにとって、クリスの「ジョークといえないジョーク」は、暴力に出てまで貫く正義だったのか。
いっときの沸点でそうなってしまったなら、あまりに残念。
今後ウィル・スミスという素晴らしい俳優を語るとき、演技でなく、この騒動が真っ先に言われませんことを。