息をのむほどの細緻な職人技の美術作品を集めた『超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA』(2023年9月12日~同年11月26日、三井記念美術館)に行ってきました。
結論から言えば、よくまぁアタオカなアーティストと作品ばかり集めてきたな、と(激賞しています)。
思わずガラスケースを前屈みに覗き込まずにいられない展覧会です。
展覧会の内容
絵画、彫刻、漆芸、金工、陶磁など素材はさまざま、そこからトンデモ細緻な職人芸を繰り出す現代アーティスト17人による、64作品が展示されています。
一部作品は写真撮影可。公式サイトはじめ、検索すると本展で紹介されている記事や画像がヒットしますが、これは生で観ることを強く勧めます。
会場入口向かいにある小部屋で流されている、出展アーティストの創作風景を追ったドキュメンタリーは、入場前の視聴をおすすめ。作品が2倍楽しめますよ。
これが良かった! 個人的な推し作品
最も印象に残ったひとつが盛田亜耶さん(1987年~)の『ヴィーナスの誕生II』、ボッティチェリへのオマージュで、主役のヒロインはアジア人女性。そのテーマ性だけでなく、切り絵の細かすぎる刻みとそれを幾重にも重ねて奥行きを与えている点が、もう(下部リンク公式サイトに部分写真あり)。
絵画ではほかに、日本三名瀑を描いた山口英紀さん(1976年~)の水墨画も必見。モノクロ写真と見紛います。山口さんは中国で技術を学んだ本格派なのに、作品は写実もいいところ。水墨画のイメージが覆えります。
写真撮影可の作品から少し紹介
どれも食い入るように見ずにいられませんが、その中から少しだけ。
展示室冒頭で出迎えるのは福田亨さんの『吸水』。この蝶が載っている台座は、水滴部分も含め一木で彫り出されています。
わかりますか。水滴はその部分の厚みを残して彫り、研磨したもので、もともとは一つの木材だったのです。
あな恐ろしや。
『「ねじが外れている」モンキー、工具箱、ねじ』は漆芸家の若宮隆志さんがプロデュースする輪島の漆芸職人集団、彦十蒔絵によるもの。
いいですか、これ漆器ですよ。
ありふれた金属製品を立体静物画のごとく表現しようとする変態的な発想といい、この質感を漆で再現する技術といい、どうかしてますな(激賞しています)。
こちらは青木美歌さん(1981年~)の『あなたと私の間に』というガラス作品です。
ねぇ、きれいでしょ~。
写真ではわかりづらいですが、フロートしているのではなく、ガラステーブルに貼り付けられられているんです。、
キノコや菌を彷彿させる生命は、バーナーでガラスを溶かしながら制作されたとか。
まとめ
東京宝塚劇場での観劇を予定していた日に公演中止になってしまい、Bプロとして足を運んだ展覧会でしたが、これは行って良かった。
繰り返しますが、とにかく絶対、自身の目で見てほしい。
気が遠くなるような細緻さと、本物と見紛う質感、作品から生物が飛び出しそうなリアル感に悶絶します。
会場を出て、左甚五郎という伝説の名工を想起しました。現代にも甚五郎の右に出る者はいたんだな、と。
価格:2090円 |