京都国立博物館に初訪問し、特別展「東福寺」を観てきました(2023年10月7日~12月3日 ※東京は会期終了)。
禅画、禅宗文化の美を感じることができる素晴らしい展示で、禅に明るくない人も楽しめる構成。その歴史と美術の両方を学ぶ絶好の機会となりました。
特別展「東福寺」とは?
東福寺の歴史は鎌倉時代までさかのぼります。
摂政・関白を務めた九条道家が「奈良の東大寺と興福寺とを合わせたような大寺院を」と円爾(えんに)を開山に招いて建立した禅宗寺院です。
本展は円爾の師匠と弟子たちに引き継がれていった文化・仏法の系譜を時系列でたどる構成で、教科書には出てこない禅宗の歴史をハイライトできるようになっています。
東福寺には中国伝来の彫刻・絵画・書跡など国指定を受けている文化財が国宝7件、重要文化財98件の計105件に及んでいるそうで、本展の展示品の約7割も該当します。
書跡や宗派図に思わず見入る
個人的には書跡というものを博物館や美術館でスルーしてしまいがちなのですが、この展覧会は違いました。
第1章「東福寺の創建と円爾」で1幅の宗派図が展示されているのですが、漢字楷書の達筆でずらーっと系譜がツリーにされているわけです。
これを書けと私が言われようものなら、気が狂ってしまいますわね。
辞世の詩句である「遺偈(ゆいげ)」も展示されるなど、その意味の解説も含めて禅哲学に触れる機会となりました。
「虎 一文字」が個人的にはお気に入り
円爾の弟子である名僧たちの頂相(肖像画)や功績も展示されていますが、なかでも魅かれたのが「虎」という書跡を表した「虎 一文字」。
描いたのは円爾の孫弟子で、東福寺第15世住職の虎関師錬(すげぇ、一発でPC変換! しっかしすごい名)。
虎という漢字にも見えるし、虎のような動物が座っているようにも見える。この画自体が、まるで禅問答のように答えがない。
気に入ったので、帰りにミュージアムショップでブックマーカーを購入しました(下写真)。
まとめ
たびたび京都を訪ねていますが、京博は開いていないことが多く、今回はラッキーでした。
ただ残念だったのは特別展のために常設展が休止になっていたこと、シンボルである洋風建築である旧本館建物が免震改修の基本計画を進めるために非公開になっていること。
特に旧本館は使ってこそナンボなので、せめていつ公開予定なのかだけでも知りたいところです。