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「大津絵」で芸術の真価・真贋を考えた。

東京ステーションギャラリー「大津絵」展

JR東京駅丸の内北口、東京ステーションギャラリーで開かれている「もうひとつの江戸絵画 大津絵」展に行ってきました(〜2020年11月8日、入館券はローソンチケットで事前購入制、一般1,200円)。

こんにちは、hirokiです。
今日は江戸初期から流布し、いつしか消えていった無名画家による「大津絵」展について少し。

「大津絵」とは江戸時代初期から東海道の大津(滋賀県)周辺で生産されたという「おみやげ品」だったそう。
この展覧会では大津絵が150点ほど展示されています。

大津絵はどれくらいの人数の画家が存在したのかは不明で、画風も画の題材も似たような作品が並びます。
展覧会のキャプションもユニークで、作品タイトルの下には旧蔵者名と現蔵者名(日本民藝館、大津市歴史博物館ほか笠松日動美術館や浜松市美術館など各地の美術館が多い)を併記。
描き手の画家が無名ですから、そのクレジットはないのです。
有名な絵師集団の作品でも、浮世絵でもない絵の展覧会という、実にチャレンジングな企画です。

では、そんな無名画家の絵がなぜ後世に広まったかといえば、本展でいう旧蔵者すなわち富岡鉄斎(文人画家・儒学者)、浅井忠(洋画家)、柳宗悦(民藝運動創始者)といった大御所たちが価値を見い出し、こぞってコレクションしはじめたから。
そこやって芸術家や実業家に、歴々と所有が受け継がれていったんですね。

しかし、正直言って個人的にはどうにもピンときませんでした。
「藤娘」「座頭」「猫と鼠」など同じ題材の朴訥とした作品を見ていると、たしかに民藝の柳さんが褒めちぎったのは分かる気がします(柳は大津絵を「民画」と言ったそうな)。
が、そこまで人気を呼ぶ絵画かいな、と首をかしげたくなるんです。

で、はたと思いました。
美術館入口のポスター(冒頭写真)の、展覧会のキャッチフレーズに「欲しい!欲しい!欲しい!」とありますが、まさに当時これだったんじゃないか。
浅井や柳が激賞するのにつられて、価値がわからなくても「じゃあ持っておくか」という気にさせられる。
芸術家界隈でそれを褒めておかないと、「おまえはこの良さがわからんのか」と審美眼のなさをディスられてしまう。

本展の構成が、時系列をたどりながらも、浅井から芹沢銈介(染色家)、小絲源太郎(洋画家)まで旧蔵者ごとに展示されているのがその証。
作品の価値を作品そのものではなく、旧蔵のリコメンダーに寄るという、ある種の「権威付け」をしないといけない苦しさ。

でも我が身に置き換えると、日ごろいかにネームバリューに左右されているのかと思います。
アートなら、ピカソだからゴッホだから、琳派だから北斎だからと言って観に行くわけです。
それらのタグを外したとき、自分自身が真価・真贋をどう評価するのか。
そう問われている気がしました。

ところで、無名画家の作品の数々は、どこか「観たことのある絵」なんですよね。
展示室に足を踏み入れ、作品に見入るうちに思い出しました。
レストラン「肉の万世」に飾られている、清水崑さんの大判絵画のイメージなんです(清水さんが大津絵の影響を受けていたら面白いのだけど)。

会期終了まであとわずかですが、あなたも足を運んでみてください。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性