映画『無名』：新旧の文化が交叉する中国ノワール。

投稿日 2024年5月10日
更新日 2024年8月12日
著者 hiroki
カテゴリー演劇・映画

トニー・レオン（梁朝偉）とワン・イーボー（王一博）の新旧スターが共演する中国ノワール『無名』（2023年中国／チェン・アル監督／Hidden Blade）。
見せ場の多い派手な映画に辟易気味な身としては、最低限の表現とセリフで登場人物たちが置かれた状況がわかる映画に好感が持てます。

日本軍が占領する1940年代の上海を舞台に、中国共産党のスパイと日本軍のスパイの攻防を描く話。日本の傀儡とされる汪兆銘政権の政治保衛部主任のトニー・レオンと、その部下であるワン・イーボー。ふたりは日本軍のスパイのトップの下で諜報活動を行っているのだが……。
あらすじを書きすぎるとネタバレにつながる「スパイもの」ゆえ、この辺で。
随所に暗示や隠喩もあるのも特徴で、中華民国の歴史をなぞっておくと理解を深めやすいです。

時系列が入り乱れて、過去と現在を行き交うような凝った構成はタランティーノの『パルプ・フィクション』のようで、実際アル監督は影響を受けている様子。
アクションシーンでもタランティーノ作品を彷彿させる演出があり、相当な思い入れだとわかります。

日本料理の刺身から中国料理の酔っぱらいエビまで、食べるシーンが多いのも印象的。食が中国の一大文化であることを思い知されます。
喫煙シーンもうれしいね。タバコを吸う姿にかっこよさを見い出されていた時代、もう再来がない分、しばし見惚れました。
ふたりとも実に堂に入っていて素晴らしい。

それにしても、戦中の日本は酷いことをしてきたもんだね。劇中でそのいくつかが出てきますが、そりゃあ日本憎しになるのは当たり前です。
内容からして日本での公開が危ぶまれたようですが、ワン・イーボーのファンが公開を後押しした模様。
複数の公開待機作が控えている注目のスター、端正な顔立ちに女子がハートマークにあるのも納得です。
日本でも大ブレイク夜明け前でしょうな。