東宝ミュージカル『エリザベート』マイ初日、観てきました(帝国劇場、2019年6月22日マチネ)。結論から言うと、ややテンポがゆっくりで全体的に演技が固いかなという印象はあったものの、総合では高得点を差し上げたい素晴らしい出来。日本における『エリザベート』で後々まで名を残すであろう当たり役である花總まりさん&初トート役の古川雄大さんの共演は、意外なほどマッチしていました。
今回を触れる前に、前回公演の話に遡りますが。小池修一郎さんにより大幅に変更された新演出が奏功したうえに、城田優さんがトート役として復帰した2015年・2016年公演は、非常に興奮したものです。あのときは「人々は熱狂している!」といっていいくらい、観客の皆さんヒャッハーしていましたよね?
全部が名場面といえる作品のなかで。当時ぼくは新演出版を2階席の最前列で初めて観たのですが、2幕の「憎しみ(HASS)」から「闇が広がる」に至る、巧みなシークエンスに唸りました。アンサンブルキャストとトートダンサーがハーケンクロイツの旗を高らかに掲げて舞台奥に飛ばすと、その下からトートが姿を現す演出に、思わず「おぉーーっ」と声を上げそうになったくらいです。1幕、ウイーン・アウグスティン教会の「不幸の始まり」と並び、最高にクールな演出ですね。
さて前段が長くなりましたが、初めてづくしの当時と比べると、今回は随分冷静に観られました。小池さんがパンフレットで触れているように、前奏やアレンジに作曲家シルベスター・リーヴァイさん自らの手による幾分の変更が。演出も細かい変更が見られました。改良されるのであれば全然オッケーで、進化を試みる姿勢はいいですよね。
タイトルロールの花總まりさんは、全く年齢を感じさせません。それどころかむしろ、肌ツヤに光沢が増しているようにさえ見えます。相当に節制しているんでしょうね。この日は歌唱がややつらそうに見受けられましたが、2幕ではすっかり修正していて、プロはやはり全然違うと思いました。
初トートの古川雄大さんは、歌唱が格段に向上していて、しかも安定感も備わっている。すごく練習したんだろうなと想像できます。この先々、どういうふうにトートを進化させ、自分のものにしていくのか楽しみです。
ルドルフ役はこの日は三浦涼介さん。古川雄大さんがトートを演じることで、さらなる若返りが進行しています。演目が鉄板の人気を継続しているゆえ、世代交代の歩は緩めないのかもしれません。
観るたびに発見のある『エリザベート』ですが、今年はあと1回。貴重な機会、目と耳をかっぽじって観たいと思います。