昨年2016年に読んだリンダ・グラットンの「ワーク・シフト」は、人工知能とテクノロジー進化が先鋭化する近未来、人間の仕事のスタイルがどのように変化するかを具体像で迫った良書でした。SFではなく、劇的な変化はもう目の前だと思い知らされ、戦慄したのをいまだによく覚えています。
彼女の新著、あまり未来を考えたくない身としては手に取るのが億劫でしたが、気になっていたことは確か。で、読んでみました。
「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」(リンダ ・グラットン、アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社、税抜1,800円)
「LIFE SHIFT」はこんな本です
1.余暇を娯楽で浪費するのではなく、生涯にわたり自己投資に充てるよう進言し、その道筋を説く。
2.教育・仕事・引退の「3ステージ」時代は終わり、それぞれの時間を行き来する「マルチステージ」の道への生き方を紹介する。
3.否が応でも長寿の可能性がある時代、お金の考え方、時間の使い方、人間関係の構築の刷新を呼びかける。
著者は高齢化社会、長寿時代の到来で個の重要性を説き、組織に縛られた人材から、インデベンデント・プロデューサー(自分で職を生み出す人)へのシフトチェンジを促します。
「LIFE SHIFT」で響いたこと
1.真の価値は、単なるモノづくりよりもイノベーションである。
2.誰にも未来は読めない。だからこそ、変化や不確実性に対応できるような体質にする。
3.自分固有の「評判」は、自分の行動が生み出す。それは周りから広まり、自分ではコントロールできない。
寿命100年時代を生きるヒントとして、ジャック、ジミー、ジェーンという、それぞれ1945年、1971年、1998年生まれの人物の人生シナリオを鮮明に想像しています。もちろん架空の人物に当てはめた、架空のシナリオです。が、これがリアル感たっぷり。それぞれのキャリアを3.0(変化しなかった場合)、3.5(変化に適応した場合)、4.0(果敢にリスクを取り、自ら変身した場合)にシミュレーションし、それぞれの何十年か後に訪れる姿を描きます。
これがフィクションと片付けられたら、見方によっては安心かもしれません。現状でぬくぬく、そのほうがラクです。が、やっぱり「なりたい自分」を想像して行動するほうが、波乱はあれども明るく楽しくやれるのだろうな。そう気づかされました。
全10章、399ページ。読後は現状を憂うばかりでなく、何か具体的なスモールステップでも踏む気(機)になる。そんな気を持たせ、奮起させてくれる本でもあります。