『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』展に行ってきました(~2019年4月7日、東京都庭園美術館)。岡上さんのことを全く知らずに作品を見て回ったのですが、エレガントでありながら、華やかというよりもどこか愁いを帯びた作品の数々に魅了されました。行って良かったです。
岡上さんは1928年生まれのコラージュ作家です。コラージュとは「互いに全く無関係のものを組み合わせ、切り貼りすることでできる芸術作品」のことで、日本では草間彌生、横尾忠則、赤瀬川原平などなど錚々たるアーティストも世に送り出しています(ぼくはコラージュというと写真誌「FOCUS」に連載していたマッド・アマノさんを思い出してしまうのですが……。こちらは風刺画ですね)。
一目で気に入る画があって、1階の広間突き当たりに掲げられていた「夜間訪問」という作品。霧雨に暮れる街と、メリー・ポピンズのごとく、天を堂々と歩きながらこちらに向かってくるかのようなドレスの女性。その対比がなんともすてき。
ミュージアムショップで、その絵柄の入った絵ハガキとクリアファイルを入手したのですが、図録もポスターもこの作品が表紙でした。やっぱり惹きつける力、作家を表す象徴的な画なのかもしれません。
岡上さんは年表の経歴も興味深い。セツモードセミナーの創始者・長沢節へのあこがれで洋裁学校に通ったのがきっかけで、こちら=コラージュの世界に入ったというのが面白い。
さらに後に武満徹夫人となる若山浅香を通して武満徹と知り合い、その武満の紹介で日本のシュルレアリスム運動を率いた瀧口修造と出会い、才能が開花したわけです(おそらく岡上さんの実質的なメンターだったのでしょう)。
岡上さんが瀧口さんに教えてもらい衝撃を受けたという、マックス・エルンストの作品の数々も展示されています。岡上さんの作品にエルンストから影響を受けた足跡は感じられませんでした。
それは1950年代に「VOGUE」「LIFE」「Harper’s BAZAAR」といった、当時西欧の最先端のファッション誌やライフスタイル誌をモチーフに、岡上さんが女性を主役にした作品を創り上げているからでしょう。この辺りのレコメンド力というか審美眼に、たぐいまれなセンスを感じます。
だから無色、一色刷り主体の中にも、女性の力強さと自由な羽ばたきを感じられる作品が大多かった。
これがアール・デコ様式の美術館の内装と調和して、美術館自体が作品の額縁となっていたのは贅沢な演出だなぁと思いました。