赤坂見附ですぺら。夏向けシングルモルト3杯プラスαを飲み比べました。
店主中村元昭さんのリコメンドは、ヘーゼルバーン、グレンモーレンジ、ボトラーズのオーヘントッシャン。
通して飲んでみて、3杯とも香りと味が一直線に統一されていてびっくり仰天です。全くブレがない。気持ちのよいプリフィクスでした。
1.ヘーゼルバーン10y
- 香り…アタックは柔らかいながら、瞬間的に線香。洋梨。草原にいるかのような爽やかさ。
- 味…ライトボディ。スウィート。メイプルシロップ入りの紅茶。
- 総評…3回蒸留ならではのクリーンでクセのない、折り目正しいシングルモルト。キャンプでどうぞ。
ヘーゼルバーンなぜかバーボン樽を出していなかったんですね。この10年ものも当初リミテッド予定が、スモールバッチながら定期的リリースになるようです。
3回蒸留とはなんぞや。そのエントリーとして最適なのがこのヘーゼルバーン10年という中村さん。バーボン樽は樽そのものの化粧が薄く、ローランドの特徴である3回蒸留の個性が出やすい。これでピンと来ないなら、(1993年に閉鎖されたローランド伝説の蒸留所)ローズバンクに行かなくてもいいでしょうと。
中村さんの解説は「メイプルウォーター(メイプルシロップの前段階)的でみずみずしい。河原のニュアンス。海の有機物に行く前の、上流の川。藻が乾いたときの香り」
さらに「鮎のイメージがある」という話にもびっくり。なるほど鮎の分類はキュウリウオ目。藻を食べるから瓜、スイカの香りがするというのも、まさに目からウロコな発見でした。
後で思い出したのですが、実は同じものを別の場所で飲んでました。そして全く違うノートを書いていたという……。全然修業が足らんです。
2.グレンモーレンジ ターロガン
- 香り…爽やか。洋梨のタルト、メロン、青リンゴ。
- 味…若い。亜麻仁油。白だし、綿あめのニュアンス。
- 総評…軽めだけど個性はしっかり。年数が浅い原酒で構成されている気配。若いウイスキーを好む人なら楽しめる。
2杯目はグレンモーレンジの免税店向け商品「ターロガン」。このネーミングはモーレンジの仕込み水、ターロギーの泉に由来するのは明らか。こちらは新樽の原酒とバーボン樽の原酒をヴァッティングさせたものだそう。1杯目との対比としての面白みもあります。モーレンジは新樽のみのエランタという商品を出していましたけど、このターロガンもOKです。
「白樺の林。森ではない。高原のキャンプ場」と中村さん。
グレンモーレンジ ミッドウィンター ナイツ ドラム
- 香り…杏ジャム。オレンジ。
- 味…コクあり。ややベリー系のフルーツ。カスタードクリーム。
- 総評…上品な甘さ。飲みやすく温もりを感じる。冬の日の陽光のイメージ。
さらに、間に「真冬の夜の一杯」と名付けられた、雪の結晶を思わせるこの白いラベルをハーフショットでもらいました。おそらく英国内限定品です。
「18年と飲み比べるのがいい。これは冬向き。ウォーミー」と中村さん。ぼくはヘーゼルバーンよりも、このウィンタードラムにメイプルシロップ調を感じました。
それにしても。グレンモーレンジとアードベッグを所有するMHLVモエヘネシールイヴィトンは、種々の企画モノを出していますが、今後はどんな商品で驚かせてくれるのでしょう?
アードベッグの2017年の限定品「ケルピー」は黒海の新樽を使って熟成させたものでした。
もしかすると今後ハンガリーのトカイワインや、東ヨーロッパ、エストニア、ルーマニア近辺のワイン樽を一部使ったものがリリースされるのでは?と中村さん。なるほど、そう考えると奇手ともいえるケルピーのスペックは合点がいきます。ケルピーのリリースは奇手どころか、次なる一手の布石かもしれないですね。
3.ケイデンヘッド スモールバッチ オーヘントッシャン 24y カスクストレングス 41.1%
- 香り…ミント、シトラス。これも洋梨。
- 味…軽いのに表情豊か。フルーツケーキのような複雑な甘さ。フィニッシュは黒胡椒。
- 総評…驚きの当たりの良さ。カスクストレングスなのに非常にとっつきやすい。
「3回蒸留、20年以上、夏向き。抜栓仕立てはシャープというかソリッドというくらい固かった。だいぶ空気に触れて良くなった」と中村さん。
夏の3杯。ウイスキーなのに一部始終、爽やかでした。世はシェリー樽ブームですけれど、本当の意味での美人(=美味しいシングルモルトウイスキー)って何なんでしょう。
シェリー樽というお化粧上手を褒めるのか。あるいはナチュラルメイク、すっぴんに近いバーボン樽を評価するのか。好みは分かれるところでしょうけど、どうあれ常に冷静に、フェアに見るように努めたいと思いました。