ウイスキーフェス1日目のセミナー2コマ目は、またまたクラフト。今度は日本のイチローズモルトです。ベンチャーウイスキーのイベントにようやく! 初めて出席することができました。
講師は株式会社ベンチャーウイスキーのブランドアンバサダー・吉川由美さん。「水・麦芽・酵母、そしてもう一つの原材料を探せ!」というタイトルで、吉川さんが明るく、歯切れよく、平易にレクチャーしてくれました。
ウイスキーの工程の説明を聴いた後に、カスクサンプル5種をテイスティングしました。「蒸留年ができるだけ近く、少しずつ異なる樽材」の5種を持ってきてくださったんだとか。その5種とは
1.スピリッツNo.1(時間と樽を経ていない)
アルコール度数63.5%。2018年11月17日に取得した最新のサンプルだそう。吉川さんはニュースピリッツに最近いちばん興味があるんだそうで、ウイスキーになる前の1~3年にスピリッツがどう育っているのか、造り手がどういう味を作ろうとしているのかを探れるから、といいます。
2.秩父9年 カスクストレングス バーボンカスク(2009年蒸留、樽番号423)
61.3%。樽詰め時は63.5%。蒸留所オープン1年後のバーボンバレルのもの。秩父の中のクラシックフレーバー。「どちらかといえば”とろみ”があり、口に含むと心地よいタンニン感がある。樽香だけでなく、しっかりとしたフレーバーが次々に。爽やかなミントも秩父のキャラクターのひとつ」と吉川さん。
3.秩父9年 カスクストレングス ホグスヘッド(2009年蒸留、樽番号725)
59.6%。「2よりも重厚。飲み応えがあって、樽香が強い」と吉川さん。「梅干しの種の中の味」とも。樽のヘッド(鏡)は家具などに使われる北米原産のレッドオークを使っているそうで、漏れやすいのが難。樽材にはあまり使われないんだそう(秩父もほぼ半分くらいの樽で漏れが発生しているとか)。このキャラメルのような味、貴重ですね。
4.秩父9年 カスクストレングス ニューフレンチオーク(2009年蒸留、樽番号2356)
63.2%。吉川さん曰く「ヨーグルトのよう」。フランス・トロンセ(森林浴で有名とか)のフレンチオーク新樽での熟成。ポイントは「新樽」です。ワインでフィニッシュされている樽のウイスキーはよく見かけますが、何も入っていないというのが新鮮。このチャレンジがいかにも秩父蒸留所といったところ。
「4」に際して、秩父蒸留所が樽を調達しているトロンセのクーパレッジの写真をスライドで見せてくださったのですが、そのクーパレッジは木のトレーサビリティを確保しているそう(木材にバーコードが付いた写真が)。
どういう樽を自分たちが使うのか、実際に現地で見る。人任せにせず、検証もする。ウイスキーでオーガニックを名乗るのは難しいという話を聞いたことがありますが、年数がモノを言う世界でこうした取り組み、蒸留所も製材所も素晴らしい。
秩父で使っているオーク材は、アメリカンホワイトオーク、フレンチオーク、スパニッシュオーク、ミズナラ、レッドオーク。すべてナラ科なんですね。「イノベーティブというよりもクラシック」と吉川さん。造りの部分もスコットランドの伝統を踏襲しているといいます。
なかでもウェアハウスでいちばん多い(全体の50%)のはアメリカンホワイトオークのバーボンバレル(1stフィル)。僕は「2」→「4」→「3」の順で良いと思いました。
セミナーのタイトルの正解は、ここまでくれば分かりますよね。「樽」と「時間」です。粋なことを仰います。時間も原材料なのだと。
最後に、
5.秩父10年 カスクストレングス ミズナラカスク(2008年蒸留、樽番号89)
これはサプライズ。樽は今やイチローズモルトの代名詞ともいえる、ミズナラ(学名:Quercus crispula=クエルクス・クリスピューラ)です。フィニッシュでなく、最初からミズナラの樽で寝かせてたものですよん。秩父蒸留所の樽はほとんどが北海道産(旭川の原木市で調達)で、発酵槽は東北産だそう。秩父でもミズナラはあるらしいですが、標高900mの山に入らないと群生林が見つからないらしく、北海道産にしているとか。
ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎社長が、東京五輪の開かれる「2020年には10年ものをリリースしたい」と仰っていましたが(ウイスキーガロア創刊号)、まさかここでいただけるとは。いやぁうれしかったなぁ。ありがとうございました。