ウイスキー文化研究所のセミナーに参加しました。香りに焦点を当てたシリーズで、「ピート」「酵母」に続く第3回は「樽」がテーマ。どうしても「なんとなく」「こんな感じ」とあいまいな表現になりがちですが、「より具体的で」「科学的な根拠に基づく」表現方法を学びました。
講師は早川健さん。キリン富士御殿場蒸留所の元チーフブレンダーで、「富士山麓樽熟50°」や「富士山麓シングルモルト18年」などの開発を手がけた方です。
まずは「マッカラン12年」を試飲し、その香味を表現します。手元の用紙に感じたままを書き込んでいくのです。講座のラストで早川さん評価のプリントが配られたのですが、工程ごとに香り、味の評価を書き込んだシートが細緻でした。ここまでやるのか、プロは。
たとえば今回のテーマである工程の一部を成す「熟成(樽)」では、樽香の強さやタイプ、熟成感(未熟臭の有無)、過熟感(酸臭、渋みの有無)を表していく。早川さんは「ナッツ、アーモンド、クッキー、ジャム。やや生木様、やや未熟香」と評価していました。
もっともこれはほんの一部で、そのほかに「原料」「酵母」「蒸留」「総合評価」といったパートごとに、香りと味を評価しています。早川さんの精緻な分解に、プロのブレンダーの経験と知識の凄みを垣間見た思いです。
この透明な液体4種類は、熟成香・樽香を成すサンプルです。
左から
- 酢酸イソアチル…バナナ様、洋梨様
- ウイスキーラクトン(オークラクトン)…ナッツ様、ココナッツ様
- バニリン…バニラ様
- オイゲノール…スパイス様、丁子様
酢酸イソアチルを嗅いだ第一印象としては「消毒液、アルコール」といったイメージでした。強すぎると溶剤臭がしてしまうとのことで、なるほど納得です。
オイゲノールは「スパイシー」と表現される成分で、丁子はクローブのことですね。んー、「シナモンのようでもあり、ワックスのようでもあり」といった感じ……。ウイスキーラクトンとバニリンは本当にその通り。バニリンにはより濃厚なバニラ香を感じました。うっとり。
この解説とサンプル嗅ぎの後で、ウイスキーを用いた「香り当てクイズ」を行う趣向。お題の2種類、なんとか当てることができました。
ウイスキーにおいては熟成が長ければ長いほど高額になる傾向がありますよね。だからといって、それがクオリティの高さに結び付くかといえば、一概にそうとも言えないというのが意外な発見でした。熟成の過程で樽から渋みが出てくるので、飲みにくくなるデメリットもあるようです。その辺りの調整も蒸留所の腕の見せどころなのでしょうね。