上野公園の東京藝大で開かれた学園祭「藝祭2017」に遊びに行ってきました。9月8日から3日間の開催で、ぼくは最終日にちょっとのぞいた程度でしたが、才能爆発の若者のエネルギーに触れるのは本当に楽しい。会場の混雑から逃れるために偶然入った藝大附属図書館では、学祭とは異なる尖がったイベントを行ってました。題して「本のない図書館WEEK」だって。
「本のない図書館」とはこれいかに? 現在の図書館の耐震工事を行うため、新館に移転する間隙をぬって、かつ藝祭に合わせた形で企画されたイベントだそう。とにかく入ってみることに。中では蓄音機コンサートとか、1000円以上の寄付で古本3冊を持ち帰れるという古書バザールが催されていました。
ぼくが見入ってしまったのは「Art Book Trade Fair×古本募金」という企画。「アートブック」といっても正直その定義がよくわからないのですが、フォトグラファーによる写真集よりも、さらにコンセプチュアルで、さらに美術系の写真(?)に特化した本のことでしょうか。これらを自由に閲覧することができ、気に入ったアートブックの棚に丸シールを貼り付けます。多数の投票を得たアートブックは、「藝大古本募金」をもとに購入されるそうです。
というわけで片っ端から見て回ったのですが。いちばん気に入ったのがこれ。全編を覆うダークな色調(でもどこか妖しく幻想的)の中に、「リアル・アウトレイジ」のような世界が展開されていました。
アントン・クスターズというベルギーの写真家による 「ODO YAKUZA TOKYO」というペーパーバック。2011年に発表されたこの写真集、なんでも10カ月にわたる交渉の末、山口組の内部での撮影許可をもらったそうで、ものすごく近く(でも傍観者視点)からその日常と姿を切り取っています。どんな人なんだろうと思って調べたら、まさにこのメイキングを明かしているTEDトークを見つけました。
移動中、集会(?)、ナイトクラブ。男たち(少しだけ女も)の緊張と緩和が生々しく迫ってきます。リラックスした男のショットもありましたが、なんというか(その筋の)プロの凄みというのが伝わってきます。外国人の写真家だから、一度入った後は、絶妙な距離感で撮影できたのかもしれません。本当に小指がない男の写真には仰天したなぁ。
このほかにも数点、琴線に触れる写真集がありました。書庫は臨時で設置されたであろうDJブースからの音楽も心地よく、しばし写真集の流し読みに浸りました。藝大らしい企画でしたね。