何年ぶりかで新橋のピザ店「ニコラス」に行ってきました。ここが出してくれる古き良き香りのするピザ、無性に食べたくなるときがあるんです。
創業は1954年。店も標榜している通り、日本初のピザ専門店です。以前は上野店もあったけど、いつの間にか閉めてしまったらしく、六本木本店と新橋の2店舗だけの営業です。
この店を知ったのは、ロバート・ホワイティング著『東京アンダーワールド』(角川文庫)を読んだから。「ニコラス」を開いた米国人ニコラ・ザペッティの生涯をたどったノンフィクションで、夢中になって読んだ記憶があります。文庫化されたのが2002年。かれこれ15年も経つのですね。
ニコラは東京の裏社会を牛耳ったという伝説があり、「東京のマフィア・ボス」と異名をとったほど。数々のアブない逸話が残されています。
暴力団、力道山、ロッキード事件の関係者、大物代議士……。ニコラと彼を取り巻くキナ臭い人脈のストーリーは、本物の悪の匂いを感じる怖さがあります。今のような「ちょいワル」なんて言葉はヌルい、ヌルい。こんなふうに実話が作り話を凌駕したら、映画や小説の作り手は商売上がったりです。
さて、このピザ。ぼくはサラミ・ハム・マッシュルーム・玉ねぎ・ピーマンが入った「ミックスピザ」にしました。たぶん開店当初から変わらないレシピなんじゃないかな。流行りはナポリ式のピッツァですが、ぼくはニコラスのアメリカ式ピザに郷愁の味を感じてしまいます。レンガ風の内装も落ち着くんですよね。
メニューを見てまたビックリ。ウイスキーはスコッチがグランツとホワイトホース、バーボンがIWハーパーとワイルドターキーですよ。こういうレストランでグランツを出してくれるのがうれしい。シブすぎです。
「東京アンダーワールド」を再読してから、寒い時期にまた来ようと思った夜でした。