神田駅北口から徒歩3分もかからない路地裏に「三州屋」という居酒屋があります。「大衆割烹」と冠がつくだけに料理が主で、お酒が従といった趣。ビールに焼酎、日本酒は3種ほどのシンプルさだけど、これで十分です。銀座や新橋にも名の通った居酒屋ですが、ぼくは職場に近い神田の店にたびたび行きます。
三州屋は神田に2軒お店があって、神田警察通り沿いにあるのが「神田本店」。ぼくがよく行くのは路地を入った「神田駅前店」のほう。のれんをくぐり引き戸をサッと開けると、目の前にはコの字カウンター、それを挟んで左手は座敷、右手にはテーブル席と開けた空間が。
ここでいきなり席につかず、引き戸の入口のところ、コの字カウンターの手前で待つのがポイント。割烹着を着たおばさんに「こちらにどうぞ」と案内されるまで、しばし立って待ちましょう。勝手に空いている席にドッカと座っちゃいけません。おばさんにも段取りってものがあるんですから、これは尊重しないと。
一人か二人で行くと、カウンターが空いていればだいたいカウンターに座らせてもらえます。テーブル席での相席が苦手なぼくとしてはありがたい。それに男性一人客から8人くらいの女子会まで、あらゆる層がひっきりなしに来ます。テーブル席は大勢のお客さん用でちょうどいいんですよね。
料理は名物の「鳥豆腐」。そこから煮魚、焼き魚、刺身なんでもござれ。おなかが空いてれば煮魚にごはんを添える注文もOK。ランチもやってますし(というかここはインターバルなしの通し営業、これも貴重で本当にうれしい)。ま要するになんでも美味しい。この日はアジ刺とマグロの刺身をもらいました。ピッカピカ。
雰囲気もまたいいんですよね。大声を張り上げないと連れの声が聞こえないってことは、ここではまずないです。大人数も少人数も客層が大人(精神的シニア?)が多いせいか、適度なざわめきが非常に落ち着きます。
居酒屋さんに行くこと自体が少なくなりましたが、自分にフィットする店については例外ですね。昔ながらの「加賀屋」、いつもボリューミーで群馬の銘酒「尾瀬の雪どけ」が飲める「魚金」がそう。誰にでも「第二の心の故郷」といえるような店、あるんじゃないかな。そういう逃げ場の一つや二つ思い浮かべられるだけでも、だいぶ心持が違うと思うんです。