いやぁびっくりした、いいもん見せてもらいました。何が? 一之輔さんが枕で立川談志のものまねをしたんですよ。しかもめちゃくちゃ似てるし。初めて見ました。東京・虎ノ門のJTホールで行われた「J亭落語会」での一コマです。
「JT落語会」は東京・虎ノ門のJTホールで定期的に開催されていましたが、年内いっぱいで終了。2018年からは大手町の日経ホールに場所を移しての開催となります。JTホールがクラシックコンサートに特化したホールになるとのことで、いきさつを記した主催者からの丁重なチラシが今回も配られていました。
その辺りを触りにしたのが一之輔さん。「まぁ要するに”出ていけ”ということなんでしょう」と笑わせ、お笑いはなかなか低く見られると冗談めかします。
で、松山千春さんの機内アカペラの話です。新千歳発伊丹空港行きのANA機の出発遅れを知り、その便に乗り合わせた松山さんが、機内マイクを手に1曲歌ったという話。一之輔さんは以前もこの話を枕にしていましたから、よほどツボだったのでしょう。
けれど同じ話を二度もする無粋をしないが一之輔さん、さすがです。落語家である自分が同じ場に居合わせたとして、CAに「一席やりましょうかと言ったらどうなりますかね? ”機長、一之輔という落語家が落語でもやって和ませようか、と言ってますが”。”一之輔ぇ?知らんな”って言われちゃうか」「そもそも落語だから、座ってしかできないし」「松山さんの写真見ましたけど、片手にビニール袋なんか持っているんですよ、なんですかあれ」てなことをひとしきり。
その後「談志師匠がやればどうなるでしょう?」と。「”機長、談志さんが落語やろうかと言ってますがどうしましょう?””面倒くさいからやらせとけ”となるんじゃないかな」と言った後、唐突に談志の口調で話しはじめたんです。「『死神』なんかやっちゃったりして」と、客席をどよめきと爆笑の渦に巻き込みます。
どういう受け答えをするか。「そういう妄想をするのが楽しい」という流れから、古典の「お見立て」に入っていく。いつもながら自然というか上手いというか。
三三さん、白酒さんも熱演。特に白酒さんは枕での政治家ディスりっぷりは、聴いているこちらが大丈夫かなと伏字を入れたくなるほど。ハイテンションな「火焔太鼓」が見事でした。
三三さんの話し方は、おそらく古典通好みなのでは。ぼくの場合は今的なノリでの古典落語が断然好み。そういう意味では一之輔さんや白酒さんは、年の取り方が楽しみな噺家であることは疑いありません。