「ももえです」と高座のめくりを示しながらの自己紹介から入る春風亭百栄さん。「上が“山口”ではないですけどねー」と切り出すのがおなじみ。上野・鈴本演芸場で初めて百栄さんのトリを見ました。
春風亭だいなも「桃太郎」、古今亭駒治「鉄道戦国絵巻」、鏡味仙三郎社中「太神楽曲芸」、三遊亭青森「スピード狂の詩」、橘家圓太郎「浮世床」、ホームラン「漫才」、三遊亭白鳥「アジアそば」、桂藤兵衛「家見舞」
休憩
アサダ二世「奇術」、古今亭文菊「紙入れ」、林家正楽「紙切り」、春風亭百栄「天使と悪魔」
この中席は白鳥さんの弟子・青森(前座名あおもり)さんの二ツ目昇進の初日でもあり、大きな拍手で迎えられました。「スピード狂の詩」は二輪車と一途に思う女性に青春をかける青年の、暑苦しくも可笑しいストーリー。駒治さんの「鉄道戦国絵巻」とつくんじゃないかと焦った様子ですが(乗り物つながり)、初日なのでと自らフォローしていたのがご愛敬でした。
トリの百栄さんは、まくらで「今日はここまで古典が4人、新作が3人。新作が大健闘」と前振り。寄席で噺家は楽屋入りしてから高座に上がるまで、どのように過ごし、どうネタを決めているのか「今日は噺家がそれを決める瞬間の噺をします」と、自身の持ちネタ『天使と悪魔』を。
二つ目の噺家が、後輩・一之輔の代演で久しぶりに出演かなった上野鈴本で、新作か古典か、どちらをかけるか迷いまくるという噺。二つ目になって5年くらいの主人公を、古典をかけるようささやく天使(羽パタパタの仕草に、うおぉーとなります)と、「それがおめえの本当にやりてぇことなのかい」と啖呵を切りまくる新作の悪魔(どこか文蔵さんを思わせる)が翻弄します。このやり取りが面白いのですが、展開の行く末まで固唾をのむ感じで聴き入ってしまいました。
鈴本のお席亭とお客さんのご機嫌をうかがうには、どちらが是非か。古典派、新作派どちらもアッと驚く(脱力する?)ようなサゲで、なんともはやの境地にさせてくれます。
百栄さん、ぼくは最初苦手だったのですが。何度か高座を目撃するうち、また謝楽祭でのファンサービスに触れるうち、なんとも印象的な噺家さんだなと考えを改めている次第で。寄席もさることながら、今度は落語会にも足を運んでみたいです。