鈴本演芸場2020年(令和2年)3月上席昼の部は、柳家はん治さんがトリ。その3日目(3月3日)を見てきました。平日の昼であり、また新型コロナウイルスの影響があってか、控えめな客席の埋まり具合。この日は落語云々よりも、「あいててよかった」(©むかしのセブンイレブンの広告コピー)と心の底から思える場所が、まだ少しは残っているのだということを痛感しました。
自分のブログでは、(例外あれど)ネガティブなことを極力書きたくないのですが……。新型コロナウイルスによるレジャーの自粛に次ぐ自粛で、テーマパークはもちろん、美術館、コンサートや演劇の公演が壊滅状態。少なくとも3月中旬まで再開の見込みが立たず、それ以降もどうなるか不明です。個人的に通う、40人にも満たない手話講習会も年度内のスケジュールがキャンセルになってしまいました。現在はかろうじて映画館が営業しているくらいでしょうか。
落語会(独演会)とて例外ではありません。地方での落語会はことごとく中止または延期に。何人かの噺家さんのtwitterをフォローしているのですが、皆さんの悲鳴にも似たキャンセルのお知らせがTLに飛び込んできます。
そんな自粛ムードの最中にあって、都内の4つの寄席は開いていてくれています(国の息がかかった国立演芸場は早々に中止となりましたが)。なんと心強いことか。噺家さんにとっても10日間勤める寄席の定席は、レギュラー的な位置付けとして大事なんだろうなと思いますが、こちら観る側も同じこと。ぼくのような楽しみが数少ない人間は、寄席がなければどこに行けばいいんだ? そう、つくづく思います。
だから東京や大阪など都市圏内に住む方は、この騒ぎでもし娯楽に困るようであれば、こういうときこそ寄席に足を運んでみてはいかがでしょう? この日は高座に上がる噺家の皆さんが、「賢明なお客様で」とか「これくらいの客席の入りがちょうどいい」とか「“お運びでありがたく御礼申し上げます”と、つい、お客様に流しで言ってしまうことがあるのですが、今ほど心の底からありがたく思うことはありません」とか、そう口にして笑わせてくれますが。これは偽らざる本音でしょう。
そんなそんな、こちらこそ。やっててくれてありがとう、と何倍も言いたいです。
柳家小はぜ「人形買い」、三増紋之助 曲独楽、春風亭朝枝「のめる」、柳家喬之助「出来心」、ニックス 漫才、桂文楽「権兵衛狸」、橘家圓太郎「親子酒」、マギー隆司 奇術、入船亭扇遊「厩火事」
休憩
すず風にゃん子・すず風金魚 漫才、三遊亭圓歌、春風亭一朝「強情灸」、林家正楽 紙切り(唐獅子牡丹、桃の節句、不忍池)、柳家はん治「天災」