鈴本演芸場に新年の顔見世公演を見てきました。寄席はたびたび足を運びますが、正月の落語はマイ年中行事となりつつあります。
「顔見世」というだけに、噺家から色物さんまで次々に高座に登場します。時間の都合で、5分くらいで下りてしまう芸人さんも…。
三部制で入れ替え無し。朝から晩まで席に座っていようと、お目当ての一人を見ようと、これで木戸銭3,500円。良心的すぎです。
たくさんの演者の中で、光るヒトは後々まで印象に残るもの。一部トリの柳亭市馬さん、二部トリの古今亭菊之丞さんを除いて、見事だったのはこちらの三人でした。
◇春風亭一之輔さん
冬休み中の息子さんとのやり取りをマクラで。
息子「どっか連れてってよ」
父(一之輔)「だめ、仕事だよ」
息子「だって、落語だろっ」
父「……その通り」
という、微笑ましい会話のからの「初天神」。これがまた、イマ的な子どもとの丁々発止で、カタカナ語まで飛び出します。江戸なのか東京なのか、一瞬タイムスリップしたような話でした。
◇橘家文蔵さん
この日の出番はイレギュラー。「誰の代演だか知らない」とマクラで言い放った文蔵さんは小話を。腹をめそうという浅野内匠頭の前に神が降臨、「死ぬ前にひとつだけ願いを叶えてやろう」という。浅野は「250年後の江戸を見たい」とリクエスト。数寄屋橋交差点にタイムスリップした浅野の前に立ちふさがったのは?
◇林家彦いちさん
JR京浜東北線の車内を舞台にしたドキュメンタリー落語。突然の急停車に動揺する乗客たち(主婦、サラリーマン、不良&彦いち)と、その顛末とは? 本人の実体験に基づく「実験的試み」とか。観客をそこに居合わせたかのようにタイムスリップさせるスリリングな展開、笑いと今のリアルな情景を同居させる前衛的手法に唸りました。
帰宅がてら、ぶたさんの箸袋もラブリーなトンカツ屋さんで熱燗をチマっと一杯。黒松白鹿がスタンダードなんて、うれしいです。