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映画『15時17分、パリ行き』、リアリズムの裏側にあるもの。

映画「15時17分、パリ行き」

クリント・イーストウッド監督の映画『15時17分、パリ行き』(The 15:17 to Paris)を観に行きました。2015年、アムステルダム発パリ行きの特急電車で実際に起きた銃乱射事件を映画化。テロ事件の攻防よりも、犯人に立ち向かった3人の若者の生い立ちに重きを置いた描写で、非常に好感が持てました。

主役となる米国の若者たちは、大親友同士の3人。驚くべきことに、この3人を当事者本人が演じているのです。その説得力ったら。もはや演技力云々なんてどうでもよくなるし、実際全く気になりませんでした。

リアルヒーローとなった3人はどのように育ち、どのように生きてきたのか。映画は幼少時からヨーロッパ旅行中に事件に遭遇するまでの足跡をたどりながら、彼らの事件当時の行動をカットバックで映していきます。

その緊張感あふれる編集、列車テロの再現だけでも、卓越した演出でイーストウッドは見せてくれます。が、それ以上に、彼らはなぜ勇敢な行動ができたのか。映画を見終わるころにはすっかり肚落ちさせられました。「人として正しい行動」とは、普段の生活やルーツが如実に反映され、いざというときでも自然に行動に表れるのだと。

銃を目に前にしたら、ましてや銃口を己に向けられたら、ふつうは恐怖に立ち尽くすはず。けれど彼らは怯まなかった。その理由の一つに職業が挙げられます(検索すればすぐ分かります)。職業柄だとしても、行動の最後は人間性なのだなぁと感じさせる場面がたくさん出てきます。多少の美化はあるのかもしれませんが、だとしても、不安の時代を生きる現代人には示唆されるものがあるはずです。

本作を観ながら、映画『ユナイテッド93』(2006年米、ポール・グリーングラス監督)を思い出してもいました。9.11米同時多発テロでハイジャックされた航空機のうちの一機、ユナイテッド航空93便の当時の内部を再現したノンフィクションです。あの映画の緊迫感もすさまじく、ラストは打ちひしがれます。

両作品とも実際の事件をリアリティ(当事者の起用、事件当時の取材など)をもってよみがえらせています。強烈な説得力をもって訴えかけてきますが、それだけではない。映像の世界でも小説の世界でも、リアリズムで勝負する作家たちは、たぶん「人間はこうあってほしい」という願望を込めているのだと思う。どんなにリアルであっても、観る者の感情が揺さぶられるのは、作り手の1滴の願望が伝わってくるからです。

映画「15時17分、パリ行き」

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

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