映画をオーケストラの生演奏とともに大スクリーンで体験するコンサートに行ってきました。映画は80年代の名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年米/ロバート・ゼメキス監督)シリーズの第1作です。
会場のNHKホールは満席といった印象。男女比もほぼ半々で、中にはマーティ(マイケル・J・フォックス)の衣装をまねて、赤いダウンベストを着た人もいました。これくらいライトなコスプレだと威圧感がなくて、微笑ましいですね。
スピルバーグ作品の音楽を担ったジョン・ウィリアムズさんのように。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(以下BTTF)のアラン・シルヴェストリさんは、ゼメキス作品のスコアの作曲をすべて手掛けた人。聴けば誰もが耳にしたことのある曲が出てくるはずです。
映画全編生演奏コンサートや、シネオケ(シネマ・オーケストラ。株式会社キョードー東京の登録商標)というイベントは、昨今のエンタメ界でライブ・ビューイング(演劇やイベントを映画館などのホールを借りて生で見せる)と並ぶ新たな興行形態といえます。
すでにBTTFだけで数回行われているし、ほかにもディズニーやスピルバーグ作品などで開かれており、2019年も『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『ジョーズ』『ライオン・キング』などが予定。さらには『ドラゴンクエスト』や『メタルギア』などのゲーム音楽にも及んでいます。
映画本編のセリフや効果音などは残してオケ部分を取り除き、わざわざオーケストラの生演奏を乗せて大スクリーンで見せる。一見「なにもそこまで」な試みですが、体験したい人が多かった、需要があったということですよね。
「世の中にあったらいいな」を具現化するのがビジネスといわれますが、ライビュとシネオケは、エンタメ界の活性化に一役買っていることは間違いないでしょう。
東京フィルハーモニー交響楽団(東フィル)の演奏は素晴らしく、映画の世界と完全にシンクロしていました。本編に合わせた演奏のタイミングは、モニタを見ながらの指揮者にかかっているはずですが、それを難なくこなしている指揮者のニコラス・バックさんも相当なもの。映画関連のコンサートを多数指揮している人だそうで、楽しげにタクトを振っているのが印象的でした。
最近はかつて一世を風靡したアーティストもオーケストラと組んで、コンサートを行っています。ファンは名画や名曲の新たな魅力を発見できる、アーティストやオーケストラは稼働率が上がる。誰もがうれしいイベントなんですよね。
そこでしか体験できないものを体験する。人はそういうことを求め、対価を払う時代になるんでしょうね。