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舞台『1984』、全体主義と紙一重の「今ここ」を痛感。

舞台『1984』

ジョージ・オーウェルの同名原作を小川絵梨子演出、井上芳雄主演で舞台化した『1984』。今年2018年に観た演劇で暫定マイベストワンの素晴らしい作品でした。

戦争が繰り返される1984年の世界。オセアニアを統率するビッグ・ブラザーの党により、思考・言論・行動すべてが監視される社会。その体制に疑問を持った党員のウィンストンは、大胆な賭けに出る。

全体主義に支配される社会を描いたオーウェルの近未来小説。難解で哲学的でもあり、幾重にも解釈可能な原作です。ゆえに原作を読了して観劇するのが正解。未読の人は面食らったのではないでしょうか。

2+2の答えを4と言える社会。それが当たり前だけど、この『1984』の社会はそうでない。ビッグ・ブラザーが答えを5としたら、そう言わなければならない。否、それ以外の答えはありえない。

あくまで自由と未来のために抗うウィンストン。2+2の答えを4とする彼に、党幹部のオブライエンは壮絶な拷問を加える。ウィンストンの理解者を装いながら、完全なる服従と思想の白紙化へと洗脳する。

この物語を単なる絵空事、SFもの、ディストピアものと捉えられないことに戦慄します。黒を白だと上役がいえばそうだとしなければならない。物語に出てくる「二重思考」(矛盾する二つの意見を受容し信奉する)は誰でも持ちうることだし、異端思想を起こさせないために言葉を削ぎ落とした「ニュースピーク」も、分かりやすさ重視の現代の語彙と置換できなくもないです。

のみならず。トランプ政権、フェイクニュースの横行、監視カメラが当たり前の街、#Me Tooというタグの心地の悪さ。今、この作品が再脚光を浴びているのは、これら現代さまざまな事象に敷衍しているのは明らかです。

ウィンストン役の井上芳雄さんの熱演は言うに及ばず。大杉漣さんが演じる予定だったオブライエン役を神農直隆さんが完璧に代演、今後要注目の俳優さんです。

あらゆる面で他人事と思えない物語。幕切れまで(後味はあえて言いません)、深く深く突き刺さりました。

2018年5月18日まで新国立劇場小劇場、5月16日・17日は兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、5月20日は穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールへ巡回公演されます。

井上芳雄主演 舞台『1984』

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hiroki「酒と共感の日々」

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