昨日9月16日から長野県の松本に来てます。松本に向かう途中、諏訪湖へ寄り道。といっても遊覧船に乗るわけではなく、湖畔の「片倉館」が目当てです。
ここ片倉館は、業種でいえば「日帰りできる天然温泉」(単純温泉。効能は神経痛、関節痛、五十肩など)。中央自動車道諏訪ICから7km、JR中央本線上諏訪駅から徒歩8分と、車でも鉄道でも実際アクセスしやすい。
ですが、最大の魅力は国指定の重要文化財になっている洋風建築にあります。1928年(昭和3年)に完成して以来、ほぼそのままの姿を保っているのだそう。
「千人風呂」と呼ばれる大浴室棟、何はともあれ湯に浸かってみてください。高い天井にステンドグラス、古代ローマを彷彿させる彫刻やレリーフ。お風呂に入りながら、室内を眺めて感心しきりです。映画『テルマエ・ロマエ』のロケに使われたのも納得です(2階休憩室前に阿部寛さんほか俳優のサインが)。
大理石造りの浴槽の下には玉砂利が敷き詰められていて、これが足に気持ちいい。もう足踏みしまくりです。ジャグジーバスも備えられています。
入浴後はお約束、瓶詰めのコーヒー牛乳を。2階の休憩室では軽食を楽しめますが、できればさらに上の屋上に足を運んでほしい。階段を上って扉を開けると、さえぎるもののない諏訪湖が眼前に。湖からの風も湯上りの体に気持ちいいですよ。
もし、昔の洋風建築物に興味があれば、「千人風呂」の建物の手前(というか隣り)にある、片倉会館の見学もお勧めします。この会館のフリー見学と入浴のセット券が900円で売られています。
日光金谷ホテルや富士屋ホテルもそうですが、床には絨毯がばっちり。ギシギシとなる床をソロソロと踏みしめながら歩くのがいいんですよね。2階の大広間はなんと舞台付き。200畳もの広さがあります。実際、団体利用があるそうで、ここで落語会などやったら盛り上がるだろうなぁと思いました。
もとは長野県岡谷で興した製糸業で財を成した片倉一族。「片倉館」を建てたのは、「シルクエンペラー」と称された二代目片倉兼太郎です。大正末期に欧州に視察旅行し、地域住民への福祉施設が充実することに感銘を受け、帰国後に一族から資金を集め、この温泉施設を建造したそう。その額、約80万円(現在の額にして数十億円)だって。
それにしても。大原美術館を持つクラボウといい、渋沢栄一が育てた東洋紡といい、近代紡績の歴史、発展のスケールはケタ違いですね。それに片倉一族も大原一族も、地元に還元する姿勢や社会貢献の土壌があります。
ただの金持ちでなく、突き抜けた金持ちとは、結局そういうところに表れるのでしょうね。