長野自動車道の松本ICを降りて車で1分のところに、浮世絵を専門に展示する博物館があります。その名も「日本浮世絵博物館」。
展示品の数々は、浮世絵の鑑定や復刻を手がける酒井好古堂の「酒井コレクション」のもの。寛政のころから200年以上にわたって酒井家が収集した作品を公開しているそうです。
最初の展示はやはり葛飾北斎。『富嶽三十六景』から「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」、東洲斎写楽の「三世大谷鬼次の奴江戸兵衛」といった有名作が(いずれも復刻版)。それを越えると、浮世絵の初期、墨摺絵という1色刷りの時代のものから、色のついた丹絵、紅絵とだんだん色が付いていき、多色刷りの完成形である錦絵にいたるまで、その変遷が分かるように作品が多数展示されています。
訪ねたときは「はじめての浮世絵鑑賞」という企画展を催していました。展示室は1室のみで、おそらく展示替えを定期的にしながら企画展として催しているのでしょう。常設展示は月替わりで行っているようです。
おなじみの江戸期の作品もさることながら、7月22日の信州山の日にちなんで、吉田博さん(1876~1950年)という新版画作家の作品を展示していたのが印象的でした。うっかり写真撮影してくるのを忘れましたが(館内写真撮影OK、フラッシュは禁止)、アルプスの版画など素晴らしかったです。
Googleの口コミを見ると、展示されている点数が少ないことに不満の声があるようですが、東京在住の僕にとっては満足でした。なにしろ東京で浮世絵をじっくり見るのはキビシイ。展覧会があるたびに大行列で、絵自体も小判ですから、混雑した美術館内で近寄ってみるのはほぼ不可能です(行列に並ぶのが平気な人は大丈夫でしょう)。
美術館ではある程度、静かにじっくり鑑賞したい。だからこの博物館は、落ち着いて観られただけでも十分。車が便利ですが、松本駅からコミュニティバス「タウンスニーカー」でもアクセスできます。浮世絵好きは一度は足を運んでみる価値ありと思います。