自宅の給湯器が故障してしまい、お湯が使えない事態に。浴室で自分が使う以外、用はないので、深刻ではないのだけど。使いたいときに使えないというのは不便なものだね。
たまたま丸一日フルに休日だったから、良かった。めったにないアクシデントを逆手にとって、銭湯に行ってみることに。
銭湯はJR山手線・鶯谷駅から徒歩7分ほど。台東区根岸にある宝泉湯さん。午後、自宅からこの辺まで、のんびりと寄り道しながら歩き、まだ明るいうちに一風呂浴びてきました。
東京の銭湯は久しぶり。ぼくは公衆浴場というところが苦手で、周りの人様に気を遣うのが疲れてしまう。それこそ自意識過剰ってやつで。
湯を流しっぱなしにしちゃダメとか、脱衣場でゆっくりできないとか、体を洗うときも隣の人に湯がかかっちゃいけないとか。
なんというか、
「風呂くらい、気楽に入らせてくれよ」
と思ってしまう。
地方の温泉でさえ最初は苦手なくらいだったけど、今じゃ温泉は大事な楽しみのひとつ。まぁいいかげん、中年になったってところです。
東京だろうが、地方だろうが、温泉とか銭湯って行ってみたら案外いいものなんだよね。
自宅と違い、風呂上がりに「ブルッ」と震えることがない。浴槽&浴室そのものが広いうえ、大浴場も脱衣場も温かいから、湯から出ても温度差に悩まされなくて良いのです。
何より、銭湯にはほんとにいろんな人が集う。見たところ想像するに、年齢も職業も多様、出自もバラバラ。
そういう人が互いにある程度のパーソナルスペースを守り、互いに配慮しながら、大きな浴室と浴槽に集っている。で、のぼせたら出る。そして三々五々(いや、個々に)、持ち場に戻っていく。
ん? これって、なんだか自分が大好きな酒場(=BARなど)に似ている。ここに集う人は、このスペースでは、ふだんの属性なんか関係なく平等だ。
決して顔をじろじろ見たり、居丈高になったりする人はいない(例外はあるけどね)。互いの領域を侵すことなく、礼を失しない。それでいい。そういうのがいい。
風呂上がり、髪を乾かしながら。脱衣場から曇りガラスのドアの向こうの大浴場で、みんなが静かに体を洗い、お湯の中で沈思黙考している光景を俯瞰し、すてきな空間だとしみじみ思ってしまった。
外に出るとまだ暮れ残してる。外気は寒いけど、そんな中でも身体の温かさが維持するってすごい。今さらながら、そんな当たり前に気づかされた。
給湯器の故障のユーウツも忘れ、束の間いい気分。たまには銭湯、出かけてもいいな。