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背中で泣いてる紅ゆずる。星組公演『霧深きエルベのほとり』。

東京宝塚劇場のひな飾り

宝塚星組公演『霧深きエルベのほとり』&ショー『ESTRELLAS エストレージャス~星たち』を観に行ってきました(2019年2月24日ソワレ)。宝塚を生で観るのは8カ月ぶり。すっかり星組しか観なくなり、その星組ですらも熱心に足を運ばない。イカンですなぁ。

『霧深き~』は菊田一夫の原典を、鬼才・上田久美子先生が潤色・演出した芝居。ビアフェスに沸くハンブルグを舞台にした、やんちゃな船乗りカールと名家の令嬢マルギットの悲恋。

ウエクミ先生といえば、なんといっても昨年2018年の月組公演『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』の印象です。

このショーはDVDでしか観ていないのですが、ずば抜けて挑戦的な演出でビックリ。ただし大幅に宝塚のショースタイルから逸脱しているかというとそうではない。むしろ、きちんと段取りを踏んでいる。

その大枠を崩さずに、枠内で「こういう見せ方もありますよ」と従来のファンにしてしているかのような構成。それでも「清く正しく美しく」の世界によく持ち込んだものだと、唸らされました。

どちらかというと大人しそうで、礼儀正しい(との人物評を聞いたことがあります)トップスター・珠城りょうさんに、あえてぶっ飛んだワルを演じさせたのも勝因なのかもしれません。

物議を醸しそうなものにも目がない身としては、これはチケットを取って行きたかったと悔やんだ作品でした(どのみちチケ難でしたが)。

で、期待して観た『霧深き~』は……「長い」という感想。

ひじょうに詩的で、不器用なカップルの心情が伝わってくるのですが、最後のほうは饒舌な印象です。

婿養子として上流階級に迎え入れられるはずが、マルギットの父親から手切れ金を渡され、悲しさと悔しさをむき出しにして啖呵を切って出ていくカール。

……でスパッと終わる。これでいいじゃん。『風と共に去りぬ』のようにね。

宝塚的にはそれだと「らしさ」がないし、余韻を持たせないといかんし、エンディングのタイタニック感が欲しかったのかもしれませんが。

お屋敷の広間のセットで、波止場で。この作品でトップスター・紅ゆずるさんは、後ろ姿を見せることが多かったような……。セリフや身体の動きはトーンが明るいのだけど、背中で語り、背中で泣く。退団発表後でもあり、寂しさを禁じ得ませんでした。

それにしても紅ゆずる&綺咲愛里のトップコンビには、ダントツの陽性を感じます。見ているだけで楽しくなるというか。だからなおさら寂しいものがあります。

中村暁先生演出のショー『ESTRELLAS エストレージャス~星たち』。群青色とゴールドを配したセットもいい感じ。

最近の邦楽のヒット曲が立て続けに披露されたようですが、よく知りません。それよりも育った年代ゆえ、グロリア・エステファンの「Turn the Beat Around」、ドナ・サマー「Hot Stuff」といった懐メロ系がすんなり入ってきました。

映画『ストリート・オブ・ファイヤー』(Streets of Fire、84年米/ウォルター・ヒル監督)や杉浦幸主演の大映ドラマ『ヤヌスの鏡』(1985~1986年・フジテレビ)でおなじみ「今夜はANGEL」(椎名恵)が中詰めでかかったのはツボでした。あえて昭和に戻しているね、ミドルを狙っているかいなと嘆息したほど。ピアソラの「リベルタンゴ」までかけて、まぁジャンル多彩で権利関係が心配になるくらいのヒットメドレーのようなショー。

宝塚といえば“黒燕尾”でキメて大階段をスターさんが降りてくる場面が象徴的ですが、そのキメキメを葉加瀬太郎の「情熱大陸」で飾ったのも良かったねぇ。

それにしても、ご同輩の男どもよ。こういうキザ(死語)ってくらいの振る舞いが心底似合う同性っていなくなったよなぁ。ハンフリー・ボガートもマーロン・ブランドも、今の時代じゃありえない大人の男だよね。

若さがもてはやされる風潮ゆえ、年齢に見合う貫禄と風貌の人はもはや絶滅危惧種なのかもしれない。まぁこういうことを言ってしまいたくなるってことは、トシをとった証かもね。キラキラの星組で目を保養しつつ、馬齢を重ねる我が身を顧みた夜でした。

2019年星組公演『霧深きエルベのほとり』東京宝塚劇場

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hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

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