いやぁ想像以上の良い出来でした。これなら原作ファンも、初見の人もナットクなのではないでしょうか。西島秀俊さん&内野聖陽さんダブル主演の連ドラ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)第1話を視聴し、来週以降の放送が楽しみになりました。
弁護士の筧史朗(43歳)と美容師の矢吹賢二(41歳)のイケメン男性カップルの私生活と、それぞれの仕事の哀歓を描くストーリー。男女逆転『大奥』で知られる、よしながふみの同名コミックが原作です。
弁護士と依頼人、美容師と客。2人の男性とその周辺のストーリーをオンとするなら、一つ屋根の下に暮らす2人の私生活=オフの様子も描いているのが、この原作のポイント。2人の間には史朗の作る手料理があります。
手料理といっても、男が趣味で作るよくある料理ではありません。本格的な家庭料理であり、一汁一菜で終わらせない。必ず4~5品は食卓に乗るのです。メニューは……原作を読んでみてください。
しかも史朗(シロさんと呼ばれる)は買い物上手。スーパーの特売日を頭に入れ、食費のMAXを家計簿に定め、賢二がコンビニで無駄遣いしようものなら雷を落とす。浮いた分はもちろん貯金。
お金が好きだねとケンジに指摘され、「子どもに面倒見てもらうなんて未来のないゲイが、頼りになんのはカネだけだろうが」とこともなげに言うシロさん。ですが、今やDINKSは珍しくないし、それどころか未婚化・少子高齢化まっしぐら。LGBTという言葉も認知されています。
別に子どもがいないことを悲観視する必要などないよな……と、第1巻の初版日をめくり返してみると、2007年11月22日と記されていました。ちょうど一回り前ですね、時代は変わりました、明らかに。
ドラマ化にあたり、西島さんがシロさんを、内野さんがケンジを演じます。ぼくは最初、逆なんじゃないかと思いましたが、本番を見てみてビックリ。特に内野さん。『臨場』(2009年・2010年、テレビ朝日)の検視官・倉石義男役、NHK大河ドラマ『真田丸』(2016年)では徳川家康を演じています。どちらかといえば硬骨漢のイメージが強い内野さんですが、ケンジ役での豹変ぶりにたじろぎました。
しかも。原作ではケンジがシロさんより2歳下の設定ですが、西島さん(1971年生まれ)は内野さん(1968年生まれ)より2つ下。なんと原作と2人の役者の実年齢が真逆なんですよね……。
ケンジはどちらかといえば女性的で、ややオネエっぽいところもある。原作のケンジは線が細いので、内野さんではちょっとどうかと思いましたが、いやはやファンを黙らせるだけの説得力がありました。まさに役者です。
西島さんはシロさんのイメージ通り。料理の盛り付けのシーンは全身映っていましたが、料理を作るシーンは手元のアップでした。もし西島さん本人がフライパンを振るっているなら、実に慣れたもの。今後も目が離せません。
ドラマの第1話は、コミックの第1巻と2巻をうまく取り込んだストーリーで、バランスも絶妙。脚本家とプロデューサーの手腕が冴えてます。高泉淳子さんやマキタスポーツさん、佐藤仁美さん、田中美佐子さんなど共演の役者さんのキャスティングまで手抜きなし。
関東では週末のオンエア。大河ドラマ『いだてん』もあって、久しぶりに連続テレビドラマのファーストランを楽しんでいます。