ニール・サイモンの原作をもとに、三谷幸喜さんが台本と演出を手掛けたシス・カンパニー公演『23階の笑い』を観てきました(2020年12月19日)。
ニューヨークの高層ビルの1室を舞台に、人気コメディアンと彼を支える放送作家集団が繰り広げる可笑しくも切ないコメディ。
結論から言いますと、笑いを創り出す人たちが命を削る話。
案の定、個人的には今ひとつ乗れませんでした。
瀬戸康史さん演じる駆け出しライターの主人公ルーカスは、人気に翳りが見えかけているコメディアンのマックス(小手伸也)にうまく雇われ、周りのライターに揉まれていく……という話なのかなと思いきや、そうでもない。
ルーカスは狂言回し的役割でもあり、むしろアクの強いライター陣(吉原光夫、山崎一、鈴木浩介、浅野和之、松岡茉優、梶原善)の突出した変人ぶりによって、ルーカスの比較的真っ当なキャラクターが浮き彫りにされる有様。
ストーリーにフォーカスするなら、梶原善が登場した中盤で流れが変わり、面白くなります。
移ろいの早い視聴者は、マックスのような練ったコントではなく、よりわかりやすい『奥さまは魔女』のようなシットコムに飛びついた。
マックスがいくらバラエティショーで緻密な笑いを駆使したコメディを展開しようとも、空回りしてしまう悲哀。
テレビ局はそんな彼らに放送枠や予算の削減で圧力をかけてきます。
この辺りの展開は、笑いに飢えてる一個人としても、身につまされる話で。
いやもちろん、作り手ではないので気楽な身分ですが、寄席はじめ日常の笑いが削られる恐怖を、この流行り病で気づかされました。
あえて大爆笑ではなく、客席からクスクスした「くぐもった笑い」が巻き起こる本作は、奇しくも時代に即した作品だったのかもしれません。
あまり深く考えたくもないのに、笑いについて考え込んでしまう。
コメディなハズなのに、観客を内省にいざなうなんて、やっぱ変ですよ(いち客である個人的の勝手な解釈ですが)。
余談ですが、会場の世田谷パブリックシアターは満席に近い客入りながらも、座席の肘掛け間を仕切り(パーテーション)で区切る徹底ぶり。
ラーメン店の「一蘭」を思い出しました。