前頁に続いて舞台ネタです。三谷幸喜さんの新作を観てきました。お得意のシチュエーションコメディは封印。不穏な空気が全編を覆うサスペンスになっていました。4月30日まで上演されています。
あらすじにも触れたくない方は、この先「続きを読む」を押さないでください。
『不信 彼女が嘘をつく理由』東京芸術劇場 シアターイースト
- 出演:段田安則、優香、栗原英雄、戸田恵子
- 作・演出:三谷幸喜
- 企画制作:株式会社パルコ
マンションに越した夫婦(段田安則、優香)は、隣人夫婦(栗原英雄、戸田恵子)に挨拶に行く。隣人の飼い犬の臭気に気分を害する段田夫婦。ある日、優香は戸田がスーパーで万引きするのを目撃してしまう。逡巡した末に、夫の栗原にそれを告げに行く段田夫婦。最初は妻を擁護し、事実を認めない栗原だが、やがて段田を呼び出し、妻がクレプトマニアであると告白する。栗原から口止め料として200万円を受け取り、この件を忘れようとする段田。だが、ここから日常の歯車が狂いだす。
映画も舞台も、ましてやこの手のサスペンスは自分が見るまで「見ざる聞かざる」を決め込むのが一番。購入したパンフレットにもあらすじは載っていませんでした。それがマナーだよね。
パンフのインタビューによると、三谷さんは米製ドラマ『ブレイキング・バッド』とコーエン兄弟の『ファーゴ』のような物語を編みたかったようです。どう転ぶか先読みできない、不穏な話ですね。
ぼくはそれに加えて、ヒッチコックのような展開の速さと、テレビドラマ脚本家としてもならす三谷さん流の「2時間サスペンス」のテイストが入っているなと。休憩を挟んで二幕、手に汗握るわけではないけど、聞きたくない陰口を聞いてしまったような、居心地の悪い物語が展開します。この舞台では、三谷さんが本領を発揮する笑いの部分に期待しないほうがいいです。
ぼくは三谷さんが東京サンシャインボーイズという演劇集団を率いていたころからの一ファンです。見始めたときは、まだ学生でした。毎公演プラチナチケットと化すほどの人気作家となった今も、観に行くようにしています。
今なおコンスタントに新作を世に送り出すアベレージヒッターではあるけど、打率にムラがありますね、最近の三谷さんは。2016年の大河ドラマ『真田丸』は面白かったけど、その年の暮れの舞台『エノケソ一代記』は、全然乗れなかった。
その『エノケソ一代記』後で、どうかなと思ったのですが。今回の舞台は好きですよ。示唆に富んでいて、観客にモヤモヤの波紋を投じます。ただし、成立したてのカップルのデートには向かない内容ですので、その点はご注意を。