映画『新聞記者』、純粋に娯楽作としても秀逸。

映画「新聞記者」

ツイッターの投稿で目に付いたウワサの映画『新聞記者』、ようやく観てきました。2019年の邦画シーンを振り返ったとき、間違えなく挙げられる作品となることでしょう。社会派というと何やら肩に力が入りますが、この映画はサスペンス作品としても一級の出来です。現役の記者である望月衣塑子さん(東京新聞社会部)の同名著書を原案に、新聞報道・マスコミ報道の虚実を描くドラマです。

公安警察とともにスパイ同然の行為で、政権に都合が悪いニュースを潰し、ときに嘘をでっち上げバラまく。内閣情報調査室の杉原(松坂桃李)は国家のため民主主義のためという大義がありながら、その職務実態に疑問を抱く。同じころ東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)は、大学新設にかかわる匿名の極秘情報を追っていた。真実を求める国民側の吉岡と、国家を守る側の杉原。ふたりはある事件をきっかけに、図らずも協力関係になりーー。

ストーリーにはつい最近起きた政治家、官僚、政治記者がらみの醜聞を連想させるエピソードが織り込まれ、世相・ニュースに関心がある人なら、いやでもすぐに想起させられます。

日々接しているマスコミ報道、ネットニュース。SNSを通して拡散されていくそれらは本当の真実なのか。いかに情報に踊らされているか、我が身の耳に痛い。大好きなマイケル・マン監督作『インサイダー』(1999年米)も、タバコ業界にかかわる陰謀を白日の下に晒す大スクープ完遂までを静かに描いていますが、あちらはハリウッド映画、しかもマン監督らしいカッコ良さがありました。

『新聞記者』はそんなクールな演出はないですが、張り詰めたストーリー展開でわしづかみにします。ヒロインが記者になった背景、官僚杉原の葛藤の背景を描くことで、切った張ったのスリラーで終わらせていません。で、やはり「記者とはこうあってほしい」し、「人としての行いへの願望」も込められている気がします。何より市井の視点で描き、時局柄相当勇気が要ったであろうテーマに取り組んだ製作者に拍手を送りたいですね。

役者。主役のふたりはもちろん、新聞社デスク役の北村有起哉さん、内調の幹部を演じた田中哲司さんが素晴らしかった。二人とも「自分の仕事をする」という姿勢ね。良い脚本に、物語を形成する重要な脇役がいる映画は強いです。

この記事を書いた人

hiroki

hiroki

編集者 / ライター / ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート / SMWS会員 / 訪問したBAR国内外合わせて100軒超 / 会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年) / ひとり歩き / 健全な酒活 / ブログは原則毎日更新750記事超(2019年2月現在)/ ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性