『アウトレイジ 最終章』でシリーズ第1作の白眉を再認識。

北野武監督のシリーズ三部作完結編。事前情報を入れず、予想もせず観ましたが、この「最終章」をもって本当の幕とするなら、これしかないだろうなという結末でした。

震災前の2010年に公開された第1作『アウトレイジ』は、その内容にぶっ飛びました。ヒーロー不在、カタルシス無し。生きていてほしいキャラが死に、逆転勝ちの予想は裏切られ、自業自得とはいえほぼ全員が酷い目に遭い、悪中のワルが生き残る。つまり従来の映画の公式が全く当てはまらない。

が、こうきたかー!と劇場を出た後、ふつふつと心地良さがわいてきたんです。ぼくの場合、衝撃的な映画を観たあとニヤニヤしてしまうのは、それが傑作だったときと決まってます(反対に怒りの感情が沸いてきた場合は駄作です、みんなそうかな?)。そして時間が経てば経つほど、その作品について思い出すことが多くなる。

デビュー作の『その男、凶暴につき』から『HANA-BI』、1作目の『アウトレイジ』まで、北野監督の作る場面は無機質な暴力シーンが連鎖します。こちらが縮こまるような「痛い」シーン。加えてスグ近くで起きたケンカを目の当たりにしたような緊張感と殺伐とした空気。それと同じような感触が伝わってくる。

少ないセリフがまたリアルを増幅させ、会話の間というよりも、気まずい空白や一触即発といったほうがしっくりくる演出は「お前もこういう本性持ってんだろ」と突き放されたかのような錯覚を覚えます。

1作目(とシリーズの数字を書くことになる映画だったとは)で終わらせておけば、そりゃもう語り草になったでしょう。

2作目『アウトレイジ ビヨンド』、そして『アウトレイジ 最終章』は良くも悪くもカチッとした出来栄え。非常にまとまっていて、娯楽映画としてビジネスとして計算立てて作ったなあと分かる。

役者は厚みが加わったものの、1作目の無軌道感は消え失せています。あの無軌道、冷たい暴力の描写こそが『アウトレイジ』なのだと力説したいけど、北野監督は撮りたいものを撮るだけ、今回はそれがたまたまシリーズになっただけ、なのでしょうね。

それにしても。『アウトレイジ 最終章』は興収15億円突破だそう(11月14日現在)。最終興収は『アウトレイジ』が7.5億円、『アウトレイジ ビヨンド』が14.5億円ですからねぇ。ストレスを抱えている人が多いってことなのでしょうね。怒鳴りたくても怒鳴れない。そんな鬱屈をこの映画で晴らしているんじゃないかな。

俳優がまた楽しそうにやっているから余計にそう感じます。シリーズ全体で椎名桔平、塩見三省、松重豊に一票。ビックリは韓国フィクサーを演じた金田時男さん。滑舌の悪いところなんてかえってリアルで迫力満点。本職は実業家で、北野監督には友人繋がりで起用されたとか。これ以上の記念動画はないやね。