日刊ゲンダイに連載中の噺家・三遊亭鬼丸さんのコラムを読んでいて思い出したのですが。噺家さんの打ち上げに遭遇したことがあります。なぜ、噺家さんの打ち上げと分かったか。寄席近くにある居酒屋さんで、自分の座る席のすぐ近くの小上がりに、ついさっき高座で見た噺家さんたちが飲み食いしていたからです。ちょうど千秋楽の日だったんですよね。
定席の寄席は毎月1~10日に行われる「上席」、11日~20日の「中席」、21日~30日の「下席」と10日ごとに出演者が入れ替わります(31日の月は「余一会」という単発の特別企画興行が開かれます)。この初日、中日、最終日(楽日)の公演後、出演者同士で飲み会が行われることが多いと聞きます。
寄席(特に鈴本)にわりと足を運ぶ機会がありますが、噺家さんの打ち上げに出くわして以来、酒の場での話題はもちろん、公の場での会話にはますます気をつけるようになりました。
なぜって? たとえば上述のシチュエーションで、その日の感想などの会話が演者さんの耳に入ろうものなら。まかり間違って「誰それさんのそれはセコかった」なんて軽口が当人の耳に入ってしまったなら大変です。それが誉め言葉ならまだしも、その逆なら言われた当人はいい気持ちしませんよね。あのときはさすがに寄席の感想を口にするのは控え、黙々と飲み食いしたっけな。
壁に耳ありってことが言いたいのではなく。もしも当人がいないところで、当人についての意見や人物評をするときは、それが当人に伝わってもいいようにする。これが言いたいんです。
一度こんなことがありました。以前いた職場の会議室で行われたミーティング終わりで、そこにアサインされていない上役の人物評が会話されたことがあります。上役と同等のポジションの出席者が苦言を話し終えたタイミングで、ひょっこりその上役が会議室に顔を覗かせたんです(!)。
おそらく次の会議に入る予定かなにかで、会議室に現れたと思われますが。あまりのジャストタイミングに驚いていたら、その苦言を話していた出席者の一人が、
「あ、噂をすれば影。○○さんのことを話していたんですよ(こんなふうに云々)。頼みますよー」
と、さっきまでの会話の内容を包み隠さず明かしてしまいました。
これは上手いですね。陰口にならないし、相手に話すことで苦言(というか要望)も同時に伝えられる。
ですが、注意点もあります。言われた当人してみれば、耳の痛い話はやっぱりイヤなもの(陰口たたかれるよりはマシって程度で)。褒めることは大いに当人がいない場(良い意味での陰口)でもしていいですが、やはり悪口は言わないほうが断然いい。組織で生きていく大多数の人はそうです、ぼくも含め。
上述のようなオープンの仕方は、相手との一定の関係性があってこそ成り立つものです。リアルだろうとネットだろうと、どのような場でも軽はずみな物言いは要注意です。特に酒を供にする、それがしのような人間に言ってます、はい。