前頁の続きです。グレンモーレンジのいいところは、昨今のアイラ系シングルモルトの「企画もの」みたいに値段が高騰しないことでもあります。実際「ですぺら」でも、ここは本当に赤坂かというほどの良心的なお値段でいただけました。いやアイラ系だって、プライマリープライス(一次価格)ならば適正というか、納得感があります。が、ネットで入手しようものなら、ちょっとしたバーで飲もうものなら、極端にお高くなる。なんでそんなことになるんだ?
バイネームで言ってしまうけど、モーレンジと、たとえばアードベッグ。後者のリミテッドを六本木で飲もうものなら、ちょっと値段を確かめずにいられません。ビビりますよ、ええ。でも前者で値を確かめるのは、「18年」以上や「プライベート・エディション」くらいです。
この疑問に対する中村さんの分析と答えはいたってシンプルで、「アードベッグはマニア受けするから」。モーレンジはその逆で、良くも悪くも一般受けするわけですね。確かにキルダルトン三兄弟をはじめ、アイラ系のスコッチ(アイラ島でもいい)を知っているといかにも通っぽいし、ウイスキー史上欠かせない産地だし、村上さんは紀行エッセイ書いてるし。と、まぁ愛好家の探求心をくすぐるにコト欠かないですよね。そこへ行くと、モーレンジは、いやモーレンジに限らずその他のウイスキーは、ハイランドだろうがスペイサイドだろうが大差なく、ゾーンを広めに分類されてしまうのでしょうね。
別にアイラ以外だって、優れたウイスキーはたくさんある。スコッチに限らずアイリッシュでもジャパニーズでも台湾でも、ね。「本物の目利き」とは、いっときの熱やブームに流されない。人が行っていないところで「これだ」というものを見つけられるからこそ、目利きたる所以であるわけで。そういう目を持つ本物に近づけるよう、精進していこうと思いました。
あれ、なんか柄にもなく真面目だぞ。前頁の続きはコチラでした。「トゥサイル」とはゲール語で原点、起源を意味するそう。おおーっ、「原点思考」のぼくとしては、これは絶対に飲んでおかねばならない1本です。
グレンモーレンジ トゥサイル 46%(ルイヴィトン・モエヘネシー)
- 香り…やっぱりエステリー。オレンジ、シナモン。後半にナッツ。
- 味…スィート。砂糖入りの麦茶、シリアル。ホワイトチョコレート。
- 総評…おやつモルト。ショートケーキの代わりになりそうな、ふわふわ感。デュタックよりも飲みやすく、おいしい。ストレートまたは水を数滴ずつたらして楽しみたい。
モーレンジの統括責任者、ビル・ラムズデン博士の好みらしく、OB(オフィシャルボトル)以外にも、希少な限定品「プライベート・エディション」を毎年出しています。これはその2015年リリースのもの。モーレンジお得意の樽の掛け合わせではなく、原料の大麦を「マリス・オッター」というクラフトビールに使われる品種で造ったというスペック。だから「原点」なのですね。素晴らしかったです。