行くたび通るたび、その威容に歩を留めてしまう旧岩手銀行。1994年に現役銀行として初めて国の重要文化財に指定された洋風建築です。中の橋のたもとにあるココを訪れたら、有料(といっても300円)見学コースにぜひ足を踏み入れてほしい。堅牢な金庫室は一見の価値ありですから。
岩手銀行は2012年に銀行としての役割を終え、約3年半にわたる保存修復工事を得て一般公開施設に生まれ変わりました。
設計は辰野金吾とその教え子で盛岡出身の葛西萬司。辰野は東京駅の設計でも有名ですが、ここ岩手銀行の着工は東京駅と同じ1908年(明治41年)。雰囲気が似るのは当然ですね。
入口に足を踏み入れると、まずエントランス吹抜に目がいきます。下から見上げると開放感満点。有料ゾーンには受付で300円を払ってゴー。エントランスホール(旧現金係客溜)、応接室、重役室が見られます。
入ってすぐ、階段の手摺装飾からもう、この建物がただの古い建築物でないと分かります。行員が使っていた階段の手摺子は地球儀状の、賓客用の階段はアーティチョークのような細工に思わず見入ってしまいます。どちらもケヤキの木を用いているそう。
応接室にはそれぞれ暖炉が。周りのマントルピースは蛇紋岩という岩石と白大理石で築かれているそう。戸口上には植物をモチーフにしたと思しき欄間装飾が。旧事務室所に旧支配人室を仕切る衝立には、孔雀を模った透かし彫り。どこまでも豪華で、手の込んだ意匠と素材。先人のスケールの大きさは今と比べものになりません。
なかでも興奮したのが有料コースの奥まった所にある金庫室。ぶ厚い外開きの鋼製扉から内部に入ると、3列×3段の9個もの大型金庫がコインランドリーのように鎮座してます。最上段にアプローチするためハシゴのような階段とキャットウォークがありましたが、そこに登る勇気はありませんでした。
金庫に貼ってあるシールはまだ汚れがなく、ここがつい5年前まで現役だったと気づかされます。床はコンクリート下地モルタル仕上げ、壁と天井は煉瓦に漆喰が塗り込められ、非常にいかめしい感じ。壁に貼ってある大黒様がなんともシンボリックです。
銀行の跡地を保存して開放するという試み、全国でも珍しいのではないでしょうか。クラシック建築ファンでなくても、ちょっとした社会科見学的な気分を味わえる岩手銀行。こういうスラックの使い方に拍手を送りたい。これで300円とは出来過ぎです。