若鶴酒造株式会社(富山県砺波市)が運営する三郎丸蒸留所を見学してきました。
北陸唯一の蒸留所は、ウイスキー好きなら行く価値のある素晴らしい蒸留所です。
こんにちは、 hirokiです。
今日は三郎丸蒸留所を見学したことについて振り返ります。
見学についての諸データ
住所:〒939-1308 富山県砺波市三郎丸208
交通アクセス:JR城端線油田駅(あぶらでん)駅下車徒歩30秒
予約受付センターTEL:0763-37-8159(受付日時は月〜金曜日9:30〜17:00)
※電話予約のみ(予約受付中の回は下記Webサイトからご確認を)
見学回:10:40、13:20、15:00の1日計3回(木曜日は休み)、所要時間約60分
見学料金:無料
試飲:無料(一部有料試飲あり)
蒸留所の見学は無料で、要予約。
予約しなくても敷地内の令和蔵(売店)には入れますが、蒸留所の建物の案内をしていただける事前予約が断然おすすめです。
ポットスチルとかウェアハウスとか、見たいでしょ?
ぼくは前泊で富山駅前に宿泊したので、富山駅から高岡駅まで約20分(あいの風とやま鉄道)。
高岡駅で乗り換えて油田駅まで約20分(JR城端線)かけて訪ねました。
油田駅はこんな駅舎。
城端線は2両編成の気動車です。
乗り換えがうまく行けば富山駅から最短60分ほどで行けます。
新幹線であれば「新高岡」で降車すればスムーズです(新高岡は高岡駅の次の駅)。
油田駅を降りてすぐ、目の前の道路を歩いてすぐ右側に、若鶴酒造株式会社の巨大な敷地が入ります。
前夜までの鬱々とした梅雨の谷間、この日はウソのような晴天に恵まれました。
「おはようございます、hirokiさんですか?」
「おはようございます。はい、予約のhirokiです。本日はお世話になります、、、ってか、すみません」と、ぼく。
この日の10時40分、朝イチの回で予約していたのはなんと一人だけだそう(つまり、ぼくだけ)。
にもかかわらず、なんと若鶴酒造のHさん(後で名前をお聞きしました)が門の前で待っていてくださったのです。
ほんっっと恐縮。
門を入ってすぐ左側にある「大正蔵」に通されます。
こちらは若鶴酒造創業150周年およびグループ企業(!)の北陸コカ・コーラボトリング株式会社創立50周年を記念し、2013年に改築された建物。
1959年(昭和34年)までは、実際に日本酒を醸していたそうです。
現在はビジターセンター的な役割を兼ね、面積は794.16平方メートル(約240坪)、天井までの高さ8mもある広大な建物です。
イベントやコンサートのほか、地元の自治会の総会も開催されるとか。
そこから徒歩2分ほど歩き、敷地内左奥にあるのが三郎丸蒸留所です。
三郎丸がウイスキー造りを始めたのは1953年(昭和28年)。
第二次大戦前の食糧不足(戦中の食糧管理法による米の統制)で、日本酒の製造に影が差したことを案じた当時の2代目・稲垣小太郎社長。
米以外の原料からアルコールを生む方法に目をつけた小太郎さんは、1947年に「若鶴発酵研究所」を設立。
キッコーマンで工場長を務めた深沢重敏さんを顧問に迎え、ついに1952年にウイスキーの製造免許を取得。
翌1953年に、同社初となる「サンシャインウイスキー」(ネーミングは公募で決定)が発売されます。
同社に”戻った”5代目の稲垣貴彦さん(現取締役ウイスキープロジェクトリーダー)が、蒸留の再開と、老朽化した蒸留所の改修に着手。
和洋折衷の外観は、質実剛健な木造洋式トラス構造。
2階部分の窓は手延べガラスで、もし割れたら2度と同じものをはめることができないとか。
改修費用の一部はクラファンで資金を募ったというのもユニークですよね。
目標額の2500万円を大きく上回る、3825万円が集まったそう。
入口には、ウイスキー造りの礎を築いた2代目の胸像と、支援者となった法人・個人名が記されたプレートが。
これは中の人もファンもうれしいですよね。
「建物は夏暑く、冬寒いですから、そこはご理解ください」とガイドを担当してくれたHさん。
若鶴酒造は冬場は日本酒を、夏場はウイスキーを仕込んでいるとか。
「日本酒の蔵元だからこそできる二毛作ですね」と感嘆すると、「いえいえ、従業員を遊ばせないためです」なーんて冗談を。
入って突き当たり正面には、モルトの貯蔵庫が。
1袋1トンのモルトは、スコットランド・オークニー諸島メインランド島のものを使用しているそうです。
2階に上がるとそこは、すべての蒸留機器が上から見渡せる設計になっていて、機能性とサービスを両どりが見事。
モルトミル(粉砕機)はアランラドック社のAR2000を使用し、発酵槽の素材はカナダ産の米マツ。
幸運なことにステンレス製のマッシュタン(三宅製作所製)は、中を覗かせていただけました。
しかし、三郎丸蒸留所の最大のウリは、このポットスチルでしょう。
世界でただ一つ、鋳物のスチルです。
砺波市のお隣の高岡市は鋳物の街として有名で、このスチルは梵鐘や仏像造りで知られる老子製作所と三郎丸との共同開発。
ウイスキーのポットスチルといえば、フォーサイス社の銅製と連想されますが、このスチルは、
銅90%・すず8%・亜鉛2%
という配合。
すずが加わることで酒質がまろやかになるのだとか。
写真ではわかりづらくて恐縮ですが、スチルをよく見るとラインアームが若干下向きで、パワフルな酒質を追求しているようにも思えます。
この辺りは非常に精緻なバランスを取っているのかもしれません。
階段を降りて1階に戻ると、ウェアハウス(貯蔵庫)です。
90%がバーボン樽、10%がシェリー樽とワイン樽による熟成で、中には富山県産ミズナラ樽も。
年々増産が加速しているらしく、敷地の奥には新しいウェアハウス(冒頭アイキャッチ写真)が新設されていました。
アイラ島の蒸溜所を彷彿させる「SABUROMARU」のフォントが凛々しい。
見学後は「大正蔵」で試飲タイム、さらに「令和蔵」での有料試飲を体験しました。
その模様はこちらにどうぞ。