東京・文京区立鷗外記念館で開催中の特別展「観潮楼の逸品〜鴎外に愛されたものたち」(~2021年9月12日 ※当初から会期変更)を観てきました。
展示数こそ控えめでしたが、鷗外さんは「気に入ったものを長く愛用する人」だったんだな、と。
好感が持てました。
鷗外さんの子どもたちが自著の中で、父親との思い出を振り返っています。
森於菟さんにせよ、森茉莉さんにせよ、父親が大好きなんですよね。
きょうだい各々に、自分だけの父親との思い出がある。
その傍らに寄り添うのが、鷗外の愛用する品々。
脇机、筆洗、墨置など、現代の日常では絶滅危惧種であろうもの。
灰皿や葉巻切り、ビールジョッキなど、実にさまざま。
なかでも展示後半のデコラティブなビールジョッキには見入ってしまいました。
ドイツの陶磁器メーカー、ビレロイ&ボッホ製。
1886年(明治19年)、鷗外がドイツ留学時の先生だったザクセン王国軍医監ウィルヘルム・ロートからバースデープレゼントに贈られたもの。
これは実際に使うことはなく、棚に大事に飾ってあったとか。
恩師からもらった特別なもの、ましてや今と違い西洋食器が普通でない時代。
そりゃ日常使いにはできないでしょう。
鷗外さんの旧居=観潮楼のあった現鷗外記念館には、人の目に触れていない遺品がまだまだ。
もちろん、持てるものの「モノがいい」のは言うまでもありませんが。安いものをとっかえひっかえではなく、値は張るが気に入ったものは長く使う。
こういうマインドの人のほうが、個人的には魅かれるものがあります。