今年(2020年)は、ニッカウヰスキーの創業者であるマッサンこと竹鶴政孝と妻リタの結婚100周年だったのですね。
草創期のニッカ(大日本果汁株式会社)は、ウイスキーが完成するまでリンゴジュースの製造販売で経営を繋いでいたのは有名ですが、それにちなんだ商品が出されるとは。
ニッカのシングルモルト「余市」をアップルブランデーの樽で追熟したという限定品、いただきました。
シングルモルト余市 アップルブランデーウッドフィニッシュ 47%
- 香り…やや主張あり。硫黄泉、メレンゲ、りんご、クリームブリュレ。
- 味…甘み主体。アップルパイはじめフルーツタルト。
- 総評…無骨さが取れた、おしゃまな余市。フルーツを盛り付けた分、燻煙はうっすら感じる程度に。
88点
@どれすでん
いや、意外に(失礼)イケてました。
余市といえばあのピート麦芽と石炭加熱のポットスチルという製法の厳しさ、どっしりした酒質に燻煙のイメージが先行します。
が、それらと洒脱さ、フルーティさはトレードオフかというと、全くそんなことはない。
このハッピーな掛け合わせには、かつてフツーに飲めた余市12年、余市15年を想起する人もいるのではないでしょうか。
ただ、それら年数ものよりも華やか&軽やかになった印象です。
2018年のリミテッドである「マンサニーリャウッドフィニッシュ」よりも格段にいい、と個人的には思います。
ブランドサイトによれば、アップルブランデーを28年間以上詰めた樽で、半年の追熟をかけているとか。
ノンエイジは熟成年数がバラバラの(とはいえ浅い)原酒をかけ合わせて全体最適していると想像しますが、むしろそれが今回は奏功したのかもしれません。
下手に長熟ものを詰め替えると、ストレングスを相殺するか、魔改造の失敗作となりかねません。
しかし10年ものですら容易に出せなくなった今、変わり種の樽による後熟はスペシャル感が出せるグッドアイデアですよね。
使える樽さえ押さえておけば、移し換えの手間と、少し(数ヶ月から1年)ほどの時間を費やすのみで、いつもと違う「特別なスタンダード」の出来上がり。
ちょっとした変化がファンにはうれしいことでしょう。
あとは高騰する価格と、入手しづらさという、もはや不可抗力と化したウイスキー市場の過熱が治まれば……。
と言いたいところですが、それこそがこうしたアイデア商品を生み出した源泉ともいえるわけで、なんとも複雑な心持ちです。