強い強い勧めに根負けしてしぶしぶ観に行ったのですが、いやぁ恐れ入った、こんなにいい映画だとは思わなんだ。
「どんなものかね」と観た中国製アニメ映画『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』(ロシャオヘイセンキ)、質の高さにやられてしまいました。
ネタバレなしで振り返ります。
人間の自然破壊で棲家を追われた黒猫の幼い妖精シャオヘイ(CV花澤香菜)は、人間の姿をした妖精フーシー(CV櫻井孝宏)に助けられる。
フーシーはシャオヘイを仲間に加えるが、妖精たちの不穏な動きを嗅ぎ取った人類最強の”執行人”ことムゲン(CV宮野真守)が彼らの前に立ちはだかる——
というストーリー。
アクションファンタジーというジャンルで宣伝しているだけに、妖精と人間との戦いのシーンは一大見せ場。
脚本も細かい仕掛けが随所に張り巡らされていて、情報量が非常に多い。
一度の鑑賞で完全に物語が理解するのは困難です。
これに加えて原作コミックやウェブアニメがあるというのだから、ハマると抜けられなくなる沼ですね。
個人的には、アクション以外の要素にも魅かれました。
骨格を成すのは「師弟愛」だと思ったんですよ。
「ぼくが選ぶ未来」というサブ邦題があるように、シャオヘイが自分を連れ去ったムゲンとの旅を通して、生きる術を見い出していく話でもあります(ここから先はネタバレになるので書けない)。
シャオヘイは旅をしながら葛藤を重ね、自分の生命を脅かす出来事を経た後、おそらく最初の決断=進路の選択をします。
知らず知らずのうちにメンターの影響を受け(でもメンターになる人とは分かっていない)、自分が「旅をする」と決断した瞬間、この人がメンターだと認識するのです。
メンターが誰なのかもネタバレなので書けないですが。
リアルの世界で人が経験することを、押し付けがましさなく見せているのが見事。
作者のMTJJさんは、おそらくサン・テグジュペリ、ゴヤ、トールキン、宮崎駿など幅広い作家から影響を受けていると思いますが……。
こういう「共生」的な物語が中華思想の国から生まれたことは、ひじょうに興味深いです。
「リアルさのあるおとぎ話」が好きなので、今日び流行りの特撮バンバンなヒーロー物も、アニメも、正直苦手なんです。
よりによって今年最初に劇場で見る映画がアニメとは……と正直思ったものですが、先入観を抱かずに触れてみるものですね。
年末に振り返ったとき、2021年の映画でベスト3に入る作品になることは間違いないでしょう。
ほんとは5月の「爆音上映」で二度目の鑑賞を経てから書きたかったのですが、このご時世で実現するやら。
もし体験できたら、この記事もリライトするかも……?