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映画『ハウス・オブ・グッチ』、やがて哀しき同族たち。

「ハウス・オブ・グッチ」

グッチのスキャンダラスな実話をベースとした映画『ハウス・オブ・グッチ』(House of Gucci)、めっちゃ面白かった。
うなるほどのカネがあり、ファッションブランドとしての地位も名誉も獲得している名家一族なのに、誰一人として幸せそうでない。
そこに憐憫を感じさせるどころか、一族を形成するキャラクターは見事なまでに全員クズで胸くそ。
親子・兄弟・従兄弟たちがことごとく仲違いしています。
が、面白さのツボはそこであり、リドリー・スコット監督の術中にハマってしまいました。

レディー・ガガ扮する運送業者の娘パトリツィアは、パーティで出会ったグッチの跡取りであるマウリツィオ(アダム・ドライバー)に迫り、ついに結婚。
彼女がマウリツィオの父ロドルフォ(ジェレミー・アイアンズ)、伯父のアルド(アル・パチーノ)、その取り巻き一派を手玉に取り、一族を操ろうとするーーというストーリー。
いいですねぇ、こういう暗黒の展開がたまらない。

個人的にパチーノの大ファンなので、アルド・グッチというブランドの中興の祖にして悲哀に満ちたキングメーカーぶりがたまらない(体重を増やしたであろう役作りも)。
バブル景気にわく極東の日本・御殿場にモールを築こうとするほど拡大路線に走るアルドと、ブランドの伝統とカラーを大事にする保守派ロドルフォの静かな対立が透けて見える構図。
パチーノが「サイキン、ド〜オ?」と日本かぶれで日本語を喋るシーンには、思わずニヤリでした。

ガガの堂に入った演技にクギづけ(「アリー/スター誕生』も観てみるか)。
アダム・ドライバーはじめ、ベテランの演技巧者相手に完全に対等でした。
良い意味での垢抜けなさと成り上がり感が、70年代ファッションと呼応しています。
なんだかガガの「昔懐かしファッションショー」を見せられたみたい(褒めてる)。

コテコテの役者陣のなかで個人的に最も共感(?)したのが、ジャレッド・レト演じるアルドの二男パオロ。
若造り中年ながら頭部中央が禿げ、ファッションデザイナーとしての才能がないどころか、親父アルドの株を勝手に売却してしまうダメっぷり。
それでいて自己肯定感がやたら高いから始末に負えない。
「いつか羽ばたくんだ、鳩のように」とうわ言を呟くシーンは、不憫というより狂気を感じるほど。
心をとらえて離さない異様な怪演です。

この事件後グッチは、当時新進気鋭のデザイナーだったトム・フォードと、ドメニコというブランドの弁護士で懐刀である二人が立ち直らせて行くわけで(映画本編にも出てきます)。
現在のグッチに血族が誰一人いない事実がすべてを物語っています。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

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